2008 年 19 巻 2 号 p. 43-49
深部静脈血栓症(DVT)症例について,血栓性素因の頻度とその発症の特徴を比較した.1996年から2007年までのDVT症例を後ろ向きに調査し,血液検査でプロテインS(PS)抗原量,プロテインC(PC)活性,アンチトロンビンIII (ATIII)活性のいずれかの低下例を素因群とした.対象228例(男性122例,女性106例)のうち素因群は23例(10.1%)であった(PS欠乏症4.8%,PC欠乏症3.1%,ATIII欠乏症2.6%).素因群と非素因群との間に,男女比の差は認めなかった.素因群では,DVTの発症が若齢で,家族性,再発性,素因以外の危険因子を伴わない発症例が有意に多く認められた.素因群の再発例では,再発時には抗凝固療法が行われておらず,非再発例では継続されていた.DVT再発予防のために,素因者では抗凝固療法の長期継続が望ましいと考えられた.