静脈学
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総説
病理像からみた血栓形成のメカニズム
浅田 祐士郎
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 21 巻 4 号 p. 311-318

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抄録

血栓形成は,①血管壁の変化,②血流の変化,③血液成分の変化が3要因とされる.血栓は,血小板と凝固系の相互作用により形成されるが,両者の関与の度合いは,血管の種類,壁や血液成分の性状によって異なる.動脈血栓の多くは,動脈硬化巣の破綻部に形成される.硬化巣では内腔の狭窄に伴い血流速度・ずり応力が増加しており,血小板の粘着・凝集が初期の反応となるが,プラーク内には組織因子が発現していることから,凝固系も活性化され,血小板とフィブリンからなる白色血栓が形成される.静脈では凝固系が活性化されやすいため,フィブリンと赤血球に富んだ赤色血栓と理解されているが,壁付着部は主にフィブリンと血小板凝集塊よりなる白色血栓の像を呈する.中枢側に進展する部位では,赤血球やフィブリンの占める割合が高くなり,赤色血栓の像を示すが,血栓内には多数の血小板が観察され,静脈血栓の形成においても,血小板が凝固系の活性化に深く関与していることが推測される.

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