静脈学
Online ISSN : 2186-5523
Print ISSN : 0915-7395
ISSN-L : 0915-7395
21 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
巻頭言
ガイドライン
総説
  • 浅田 祐士郎
    2010 年 21 巻 4 号 p. 311-318
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    血栓形成は,①血管壁の変化,②血流の変化,③血液成分の変化が3要因とされる.血栓は,血小板と凝固系の相互作用により形成されるが,両者の関与の度合いは,血管の種類,壁や血液成分の性状によって異なる.動脈血栓の多くは,動脈硬化巣の破綻部に形成される.硬化巣では内腔の狭窄に伴い血流速度・ずり応力が増加しており,血小板の粘着・凝集が初期の反応となるが,プラーク内には組織因子が発現していることから,凝固系も活性化され,血小板とフィブリンからなる白色血栓が形成される.静脈では凝固系が活性化されやすいため,フィブリンと赤血球に富んだ赤色血栓と理解されているが,壁付着部は主にフィブリンと血小板凝集塊よりなる白色血栓の像を呈する.中枢側に進展する部位では,赤血球やフィブリンの占める割合が高くなり,赤色血栓の像を示すが,血栓内には多数の血小板が観察され,静脈血栓の形成においても,血小板が凝固系の活性化に深く関与していることが推測される.

シンポジウム・パネルディスカッションのまとめ
原著
  • 春田 直樹, 新原 亮, 内田 一徳, 楠部 潤子, 橋本 慎二, 山本 英喜, 堀田 龍一, 倉吉 学
    2010 年 21 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    静脈鬱滞性下腿潰瘍(C6)に対するSEPS(subfascial endoscopic perforating vein surgery)手術は2009年5月,「内視鏡下筋膜下不全穿通枝切離術」として先進医療認可を受けた.そこで今回C6症例に対するわれわれの手術成績を報告するとともに,今後新たにSEPS手術手技習得に取り組む際の注意点に関し検討した.過去11年間にわれわれはSEPS手術を1000肢以上に行い,このうちC6病変を伴ったものは2008年末までに95例101肢で潰瘍治癒率は92.1%であった.SEPS手術手技自体もアクセスポートの変更や超音波凝固切開装置の導入により,90年代の導入期に比較し非常に平易なものとなった.今後は,SEPS手術で先進医療認可を受けた施設が中心となって,新たに本手術の導入を考えている施設の指導に当たることが,各施設の初期成績向上に役立ち,本術式の普及に有用であろう.

症例
  • 多田 誠一
    2010 年 21 巻 4 号 p. 339-344
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    うっ滞性潰瘍を伴う重度の静脈瘤症例(CEAP分類6度症例)に対し,エコー検査で評価不十分な場合multidetector-row CT(MDCT)にて評価した.足背の静脈から8倍希釈した造影剤をインジェクターで注入.64列MDCTにて撮影し,volume rendering(VR)法にて処理した.表皮潰瘍部の描出から,皮膚脂肪層を消去した表在静脈と穿通枝さらに深部静脈まで3D表示しその位置関係を連続再生することで評価可能であった.通常静脈瘤の形態のみを評価する場合は造影剤なしのVR法によるCT評価でも可能であるが,皮膚変化を来した重症例や体格的にエコーでの評価が困難な場合でもこの方法にて深部静脈および伏在静脈の走行,穿通枝の存在を少量の造影剤で明瞭に確認できた.さらに従来下肢静脈造影では不十分であった潰瘍底と静脈瘤,穿通枝との関係を明瞭に描出し得ることで,必要な場合には穿通枝処理も容易に可能となり術前マッピングとしての有用性は高く潰瘍治療の有効な診断法と思われた.

  • 山下 修, 吉村 耕一, 末廣 晃太郎, 森景 則保, 古谷 彰, 濱野 公一
    2010 年 21 巻 4 号 p. 345-350
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    Klippel-Trenaunay症候群は四肢の母斑,静脈瘤,下肢長や周径の左右差を主症状とする先天性血管形成異常である.静脈瘤に関しては外科処置を行うものから,弾性ストッキングなどの保存的治療まで個々に応じた治療法が選択されるが,根治は困難なことが多い.症例は52歳男性で生下時より母斑を右下肢に認め,高校生頃より右下肢の静脈瘤と腫脹を自覚,その後次第に増悪してきたため当科受診となった.超音波検査(US)にて深部静脈系の低形成は認めなかったが,大腿静脈から膝窩静脈に至る逆流が検出された.表在静脈系では,外側辺縁静脈の逆流が顕著で,大伏在静脈の弁不全を伴っていた.術前US検査に基づき,局所麻酔下で,大伏在静脈と外側辺縁静脈を高位を含む複数箇所で結紮切離し,さらに不全穿通枝と小伏在静脈の逆流部を結紮切離し,良好な結果を得た.

  • 松崎 賢司, 瀧上 剛, 松浦 弘司
    2010 年 21 巻 4 号 p. 351-354
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    骨盤外傷治療後に生じた左腸骨静脈閉塞に対して大腿-大腿静脈バイパス術(パルマ手術)を行い良好な結果を得たので報告する.症例は34歳,男性.工事現場の事故で,左骨盤骨折,S状結腸破裂となり近医にて手術を受けた.その後,左下肢のむくみが出現し,他院で検査したところ左腸骨静脈慢性閉塞と診断された.症状改善が得られず血行再建の手術目的で当科入院となった.下肢超音波で左大伏在静脈合流部位より1cm中枢で大腿静脈は閉塞していた.手術はパルマ手術を選択した.吻合直後より,静脈血栓予防用下腿ポンプを使用し急性期閉塞を予防しえた.疼痛や下肢腫脹症状は改善した.退院前の下肢静脈造影ではパルマグラフトは開存しているものの細かった.しかし,術後5カ月での造影で静脈グラフトは拡張し良好な静脈還流路となっていた.パルマグラフト自体は遠隔期に拡張・発達しうるものと考えられた.

静脈疾患サーベイ
  • 孟 真, 佐戸川 弘之, 岩田 博英, 坂田 雅宏, 菅野 範英
    2010 年 21 巻 4 号 p. 355-361
    発行日: 2010年
    公開日: 2022/07/30
    ジャーナル オープンアクセス

    【はじめに】一時留置型・回収可能型下大静脈フィルターの留置に伴う偶発症・合併症および追加処置の検討を行った.【対象と方法】日本静脈学会評議員施設に2006~2007年の診療状況についてアンケートを送付し43施設より回答を得た.【結果】フィルター留置は405例で,内訳はGünther Tulip 235例,Neuhaus Protect 106例,その他64例であった.偶発症・合併症・永久型フィルターへの変更を含む追加処置を要した症例は40例であった.フィルターの種類はNeuhaus Protect 26例,Günther Tulip 9例,その他5例であった.偶発症・合併症・追加処置は永久型フィルター留置22例,感染8例,回収可能型フィルターが回収できなかった症例4例,フィルター移動5例,外科的フィルター除去3例,下大静脈閉塞3例,留置時心血管損傷1例,などであった.【結語】一時留置型・回収可能型下大静脈フィルター挿入に伴う偶発症・合併症・追加処置は約10%であり,リスクに応じた適応の決定,慎重な手技が必要である.

追悼文
feedback
Top