静脈学
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原著
当院における静脈血栓・塞栓症に対する院内予防対策の施行状況と問題点
村上 厚文洞口 哲加藤 盛人
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2015 年 26 巻 1 号 p. 14-22

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抄録

要約:深部静脈血栓症と肺血栓・塞栓症の院内予防対策実態調査の結果と問題点について検討した.2007 年から2012 年の新規入院患者2751 名を対象とした.病棟5 カ所,集中治療室,手術室の7 カ所で入院時の低,中,高,最高リスクの指示に基づいて弾性ストッキング(ES),空気圧迫療法(IPC),薬物療法(AC)の施行状況と院内発症例を検討した.リスク分類は平均で低リスク25.5%,中32.1%,高7.2%,最高1.6%で未指示率は33.8%であった.未指示率は2009 年に14.0%まで低下したが,2010 年以降上昇傾向を示した.病棟の予防法はES:49.3%,IPC:22.0%,AC:10.7%,未指示率は36.6%であった.手術室は低28.2%,中39.2%,高12.5%,最高は5.4%で未指示率は14.7%であった.これに対し手術室の予防法はES:74.7%,IPC:61.2%,AC:5.7%で未指示率は9.6%であった.IVC フィルター留置下血栓溶解療法を行った院内発症26 例は,脳神経外科や神経内科の長期臥床患者が多く,次に一般外科,呼吸器系のがん患者で近年増加傾向であった.発症時予防対策を全く施行していなかった症例は14 例(53.8%)で,医師自身の意識向上と薬物療法を中心としたわかりやすい簡素化した予防法が重要と考えられた.血栓溶解療法後は全例溶解が得られ,もとのADL に復帰していた.

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