静脈学
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総説
最新の静脈血栓形成機序から治療を考える
羽藤 高明
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 26 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

要約:最近,静脈狭窄により血流を低下させることによってヒトDVT 類似の血栓が形成されるモデルマウスが登場した.このマウスを用いることによって予想を超えるほど見事な生体反応が静脈血栓を形成していることが明らかになってきた.静脈血栓の形成は血流のうっ滞が血管内皮の活性化を引き起こし,粘着蛋白や炎症性サイトカインを発現することによって,単球,好中球,血小板が集積することに始まる.単球は組織因子を発現して外因系凝固を稼働させ,好中球は自らの核構造物(NETs)を細胞外に放出して第XII 因子から始まる内因系凝固を稼働させる.血小板は白血球の集積を助け,NETs 形成を促進する.この新たな血栓形成機序からDVT の治療戦略を考えると第XII因子阻害薬,抗NETs 薬などの有用性が浮上している.DVT の発症機序がわかってきたことによって現在使用されている薬剤の作用が明確化し,さらに新たな抗血栓薬開発の道が開かれつつある.

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