2021 年 32 巻 1 号 p. 111-117
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,静脈血栓塞栓症(VTE)を高頻度で合併する事が報告されている.本邦では,日本静脈学会・肺塞栓症研究会による合同アンケート調査,および日本血栓止血学会・日本動脈硬化学会・厚生労働省研究班による合同アンケート調査が実施され,全体として,VTEと診断された症例の割合は,海外からの報告と比較すると低率であった.一方で,重症例では相応に発生している可能性も示唆された.現在,COVID-19症例に対する抗凝固療法の意義を検討するランダム化比較試験が複数進行中であり,それらの結果は本邦でも参考となるものと期待される.しかしながら,海外と実態が異なる可能性もあるため,本邦独自のデータに基づき議論を進める事も重要である.また,続々と更新されるデータを基に,逐次最新のアップデート改訂を前提とした診療指針を,臨床現場の混乱を招かないように作成する事も必要である.