静脈学
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症例報告
膝窩静脈性血管瘤に対し大腿静脈結紮切離術を施行した1例
杉澤 良太佐野 真規鈴木 実小谷野 憲一
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 33 巻 1 号 p. 37-42

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抄録

膝窩静脈性血管瘤(popliteal venous aneurysm; PVA)に肺動脈塞栓(pulmonary embolism; PE)を合併した高齢患者に対し,大腿静脈結紮切離術を行い,肺への塞栓流入経路を遮断し,良好な経過を得られた1例を報告する.症例は94歳女性,呼吸苦を認め受診し,造影CT検査にて両側PEと最大径26 mmの右PVAを認めた.下肢静脈の合流・走行の解剖学形態を評価し,局所麻酔下に大腿静脈結紮切離術を施行した.抗凝固療法を術後3カ月間継続し,PEは消失した.術後2年で,PVAは縮小し,PEの再発や下肢浮腫を認めず良好に経過した.PVAでは,抗凝固療法を施行してもPEの再発を繰り返すことが多く,手術治療が推奨される.全身麻酔下の瘤切除術や瘤縫縮術などの報告例が多いが,本症例は高齢のため耐術能が低く,侵襲性の低い治療を考慮し,局所麻酔下でも施行可能な本術式を選択した.術前に血管解剖を評価し,大伏在静脈,大腿深静脈などの側副路の温存が重要である.全身状態不良なPVA症例に対し,局所麻酔下大腿静脈結紮切離術は有用と考えられた.

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