日本写真学会誌
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中崎昌雄論叢と辿る写真技術史のパイオニアたち その 2
―1839 年以前の秘術の時代,写真術の三人の先駆者たち―
高田 俊二
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2023 年 86 巻 3 号 p. 261-269

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抄録

第 1 報で 1839 年を,写真が秘術から科学技術へ転換した年とした.その年,フランス議会のダゲレオタイプの年金支給 法案の審議の中で,物理学者で下院議員の Arago はそれまでの写真技術史を紐解き,Daguerre の発明はゆるぎないもの であり,芸術分野や科学の領域で,その有用性が期待できると報告した.それから約 40 年が経過した写真乾板時代に,オー ストリアの写真化学者 Eder 教授は,ドイツ人の医学者 Schulze こそ,“光で書く” を意味する “photography” の「最初の 発明者」だと主張した.それに対して英国の Wedgwood の子孫が,塩化銀紙と暗箱写生器で撮影を試みた Wedgwood こ そ,「最初の写真家」だと反論した.一方本家のフランスでは,それ以前から Daguerre にヘリオグラフィーを教示した Niépce こそが,「真の発明者」だという主張が繰り返されてきた.本写真技術史では,推薦者たちの記録に基づき,秘術 の時代の先駆者たちの貢献を振り返ってみる.

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© 2023 社団法人 日本写真学会
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