抄録
摩周湖は全面結氷になる年と部分結氷になる年があることが知られている(細川・蜂谷,2004)。亀田ら(2022)は1974 年冬季以降,摩周第一展望台および第三展望台から毎年実施されている結氷観測のデータと周囲(川湯,弟子屈)の気象データを用いて摩周湖が全面結氷する気象条件を明らかにした。その結果,川湯の2 月の月平均気温が−8.9℃以下になると,95.5%の確率で全面結氷することがわかった。また,摩周湖は1974 年から2021 年冬季までの48 年間で27 回全面結氷しており,その割合は56.3%であることもわかった。
一方,亀田ら(2022)は摩周湖の全面結氷には前年の夏季気温,特に6 月から8 月の日最高気温の平均(Tmax_JJA)と相関が高いことを指摘した。これは摩周湖には定期的な流入および流出河川がないため,巨大な「水たまり」と考えることできる。このため夏季に湖水が蓄えた熱量が結氷時期に影響を与えていることを示唆している。摩周湖の透明度は現在でも20~25 m 程度であり(弟子屈町,2021),透明度が高いことが知られている。このことも夏の気温と冬の結氷との関係の成立に影響している可能性がある。つまり,摩周湖の全面結氷は2 月の気温とともに,夏季の気温の影響を受けていることを指摘した。
また,亀田ら(2022)は夏季の気温と全面結氷と関係を用いることで摩周湖の全面結氷日が予測できる可能性も示した。これは観光業にとっても有益な情報になると考えられる。今回は最初に亀田ら(2022)の結果を紹介し,次に2021 年から2023 年冬季の全面結氷日の予測について報告する。ここで,2021 年冬季の予測は亀田ら(2022)ですでに報告したが,2022 年冬季の予測と実際,2023 年冬季の予測は今回初めて報告する。