抄録
秋田県・田沢湖では,発電と灌漑のため1940年に強酸性温泉水を含む玉川の水が導入され,これによって湖水のpH が6.7 から4.2 に低下し,固有種のクニマス(紅鮭の陸封型)が絶滅した。1991 年に,玉川温泉下流に中和処理施設が建設され,これによって湖水pH は4.2 から5.2 に上昇し,現在に至っている。本発表では,田沢湖に流入する玉川と先達川(pH=6.5~7),および流出導水路 の流量に関する水収支とSO42-の負荷量収支の評価から,同湖の地下水流入量・流出量を定量的に求め,pH をはじめとする同湖の水質変動を長期的に探ることとする。また,これまでの研究で評価された火口湖やカルデラ湖の地下水流入量・流出量を比較し,湖を形成させた火山噴火規模と湖水循環の規模との関係を明らかにする。