順天堂医学
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原著
消化管X線造影剤としてのフェライトの応用 (第一報)
基礎的検討
田村 重良栗原 稔秡川 正嗣村上 允邦
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1975 年 21 巻 2 号 p. 151-162

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抄録
消化管造影剤, 硫酸バリウムは長年にわたる研究の結果, 微細病変の描出にも有用であることが知られている. しかし, 強酸中では凝固しやすく, また胃液の多い場合, 粘膜面への付着が悪いなどまだ改良の余地がある. 近年理化学研究所杉本らにより強磁性体であるフェライトが磁気により制御可能な造影剤として開発され, 病変部を特異的に描出する可能性が示唆された. われわれはフェライトの消化管造影剤としての有用性を検討するために各種の実験を試みた. まず造影能について市販の硫酸バリウム製剤3種と比較した結果, フェライトは, 1) X線透過性が高く, 2) 沈降性が亢進し, 3) 濃淡均一性は劣る, など欠点があるが, 4) 付着性にすぐれ, 5) 強酸中での凝固性が低いなどの利点があることがわかった. フェライトが, 硫酸バリウムに比べてX線透過性が高く, 強酸中で凝固しにくいという性質から, 胃前壁病変の描出能に適していると考えられる. このためさまざまのサイズの隆起および陥凹のアクリル樹脂模型を用いて識別能の検討を行なった. 造影剤の層の厚さを5, 10, 20mmにかえて, 造影剤の濃度を25, 50, 75,100w/v%とした場合, いずれの場合もフェライト製剤は硫酸バリウム製剤に比べ識別能が優れていることがわかった. この結果, フェライト製剤は, 主として胃前壁病変の描出に応用できることが明らかになった.
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© 1975 順天堂医学会
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