順天堂医学
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原著
消化管X線造影剤としてのフェライトの応用 (第二報)
秡川 正嗣栗原 稔白壁 彦夫田村 重良村上 允邦
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1975 年 21 巻 2 号 p. 163-172

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抄録
フェライトの消化管造影剤としての基礎的検討 (第一報参照) にもとずいて, 動物の胃について, 造影診断の可能性を検討した. まずラットの胃に人工の胃潰瘍をつくり, フェライトでX線撮影をした. その結果, 添加剤数種を加え, フェライト濃度を100w/v%にした場合硫酸バリウムとほぼ同様に描出された. 次に同一じフェライトを用いて, 正常犬の胃後壁二重造影像を撮影したところ, 胃壁面に均等に付着し, 粘膜ひだの走行もよくわかる写真が得られた. さらに, 犬の実験胃癌のX線診断も試みた. この結果, フェライトは胃粘膜の微細な悪性所見にいたるまで十分描出し得た. フェライトの性質から, 胃前壁薄層法に適していると考えられるので, 犬胃の前壁に人工的に胃潰瘍をつくり, フェライトと硫酸バリウム製剤でその描出能について対比検討した. その結果, フェライトを用いると, 硫酸バリウム製剤に比して, 容易に胃全体の均一な前壁薄層像が得られた. しかも潰瘍のニッシェと粘膜の集中をみごとに描出した. さらに胃内のフェライトを磁気で移動させて, 犬胃潰瘍を描出しようと試みたが, 磁気の方向, 強さが自由に制御できないと上手に描出し得ないことがわかった.
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© 1975 順天堂医学会
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