抄録
レセルピン (1mg/kg) を発情間期の雌ラットに注射して誘起した偽妊娠に対する, モノアミンオキシダーゼ阻害剤 (ナイアラマイド), L-DOPA及び麦角アルカロイドなどの影響を調べた.
偽妊娠3日目にナイアラマイド (250mg/kg), L-DOPA (250mg/kg) を注射した群では, 偽妊娠に対する影響は見られず, 偽妊娠は維持されたのに反して, 麦角アルカロイドであるエルゴコーニン (1mg/kg) およびエルゴクリプティン (1mg/kg) を同時期に処理された群では, 全例偽妊娠の中断が起こった. このエルゴコーニンによる偽妊娠中絶は, α-遮断剤, フェントールアミン (1mg/kg) やβ-遮断剤, プロプラノロール (1mg/kg) を同時に処理しても影響を受けなかつたが, ピモザイド (1mg/kg) では, エルゴコーニンの効果が抑制され, 偽妊娠状態が維持された. ピモザイドはドーパミン受容体遮断剤であると考えられるので, エルゴコーニンによる偽妊娠中絶には, ドーパミンの機序が関与していると考えられる.