順天堂医学
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原著
うっ血性心不全による肝および血管病変の病理組織学的研究
佐久間 由吉
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1981 年 27 巻 1 号 p. 40-59

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抄録
急性ないし慢性うっ血性心不全を呈して死亡した心疾患患者120例 (小児28例+成人92例) のうっ血性肝病変を, 病理組織学的にI度 (肝小葉うっ血・萎縮), II度 {II- (1) 度 (肝小葉変性), II- (2) 度 (肝小葉出血・壊死), II- (3) 度 (肝小葉線維化) }, III度 (肝線維症), IV度 (肝硬変症) に分類して, 肝病変の形態発生を追究するとともに肝病変の各々に対応する血管 {肝後静脈 (下大静脈, 肝静脈), 肝前静脈 (門脈), 肝前動脈 (固有肝動脈) } 病変, 臓器 (肝, 脾) 重量, 腹水容量について検討した. うっ血性肝病変の発生頻度は小児群と成人群とで著しく異なり, 小児肝病変は全例がI・II度に集中しているのに対し, 成人肝病変はI-IV度まで広範囲にみられた. 成人肝病変の中, I・II度は各種の心疾患によって占められるが, III・IV度は弁膜疾患, 冠状動脈性心疾患, 高血圧性心疾患によって大部分が占められていた. うっ血性肝病変は成人群では心不全の程度および期間と相関関係がみられ, 肝病変の各々に対応する肝重量は小児・成人群とも正常範囲であった. うっ血性心不全による血管病変は, 成人群では肝後静脈に静脈硬化症がみられるが肝前動・静脈にはみられなかった. 肝後静脈の静脈硬化症は心不全の程度および期間と密接な関係があり, 下大静脈ではI度より, 肝静脈ではII- (3) 度より顕著にみられ, うっ血性肝病変と相関関係がみられた. うっ血性心不全に伴う脾重量および腹水容量は成人群では, 肝病変の進展に伴って増加傾向がみられ, III度およびIV度では門脈圧亢進症を示唆する結果が軽度ながらみられた.
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© 1981 順天堂医学会
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