抄録
65例の重症筋無力症 (MG) における非腫瘍性胸腺と胸腺腫, 更に12例のMGない胸腺腫の病理組織学的検索を行なった. その結果. MG非腫瘍性胸腺とMG胸腺腫の付着胸腺部分の全例においてリンパ濾胞形成を認めた. これら胸腺組織の容積比率とリンパ濾胞形成の程度と臨床像の関係では濾胞形成が病態に与える影響の大きいことが示唆された.
組織学的にも完全連続切片鍍銀法などによりリンパ濾胞と周囲組織の血管系及びHassall小体・嗜銀線維の再構築の結果, 濾胞をとり巻く血管系はリンパ節リンパ濾胞内外のそれと酷似していた. 更に胸腺被膜や小葉間結合織は嗜銀線維の構築上連続性を示すこと, さらにHassall小体を含む胸腺の実質及び網工状の嗜銀線維と血管に富む間質との間に存在する網目状の境界膜とも連続していることが証明された.
MG胸腺に出現するリンパ濾胞はこの間質内に位置し, かつ増大により境界膜が部分的に断裂・疎開することが示唆された. この様な間質の増殖については広義の炎症性反応に基く正常構造の部分的改築を考えたい.
一方, MG合併胸腺腫はMG非合併例と比較して腫瘍そのものに著明な差異はみられず, むしろ付着胸腺組織にMG非腫瘍性胸腺と同様の組織学的変化がみられた.
従ってMG胸腺においては胸腺組織の改築がAchR抗体産生及び遊離を可能とする一つの因子であることが推定できる.