順天堂医学
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原著
新生ラット培養心筋細胞の形態学的研究
小川 雅博
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1981 年 27 巻 3 号 p. 290-304

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抄録
I. Harary並びにB. Farleyらの方法に準じて, 生後2日のWistar系ラット心臓を培養した. 培養心筋細胞の組織再構築過程を位相差顕微鏡, および走査型・透過型電子顕微鏡で観察した. さらに培養細胞にPAS, 酸性フォスファターゼ染色を行ない, 一般作業筋細胞と刺激伝導系細胞の区別を組織化学的に検討した. 1) 円形並びに多角形の細胞表面に微細絨毛を持つ細胞は心筋細胞であり, 隣接細胞とは細胞体から延びるlong cytoplasmic extensionにより結合していた. 培養3日目には, 単一細胞からなる細胞集合体を認め, 8日目には細胞集合体による網目構造へと発育した. 2) PAS陽性顆粒は唾液消化試験によりグリコーゲンであり, PAS染色陽性細胞には強陽性, 弱陽性の2種類を区別出来る. PAS強陽性細胞は大型多角形, 酸性フォスファターゼ活性高値を示し, これは左心室自由壁よりの培養細胞に多くみられ, 対照生体のプルキンエ細胞と一致した. 一方PAS弱陽性で酸性フォスファターゼ活性高値を示し, 三角形でclear zoneを持つ細胞は房室結節由来であり, PAS弱陽性で酸性フォスファターゼ活性低値の円形細胞は一般作業筋細胞と考えられた. さらにPAS陽性顆粒に乏しく, グリコーゲンを認めないか, または少量の紡錘形細胞は結合組織系細胞と考えられた. 3) 組織化学的に酸性フォスファターゼ活性高値の細胞はPAS染色陽性であり, 培養心筋細胞においても, 刺激伝導系細胞は一般作業筋細胞より嫌気性解糖が旺盛であると考えられた.
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© 1981 順天堂医学会
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