抄録
ニワトリ砂胃筋筋原繊維の収縮とミオシン軽鎖のリン酸化との関係を調べた.
1. 平滑筋筋原繊維をATP, MgCl2, CaCl2の存在下30℃で2時間反応させると, 収縮し, ミオシン軽鎖は, 内在性の軽鎖キナーゼによってリン酸化される.
2. それを一夜放置するとリン酸化された軽鎖は, 内在性の軽鎖ホスファターゼによって脱リン酸化されるが弛緩はおこらない.
3. 弛緩している対照の筋原繊維のATPase活性は, リン酸化した筋原繊維およびリン酸化一脱リン酸化した筋原繊維より高い活性を示した. リン酸化-脱リン酸化して, なお, 収縮している筋原繊維のATPase活性とリン酸化した筋原繊維の活性は, 全く同様であった. 平滑筋ミオシンの軽鎖のリン酸化は, 筋原繊維のMg2+-ATPaseの活性化には関係なく, 収縮の状態によって影響される現象が観察された.
4. リン酸化-脱リン酸化したミオシンによる超沈殿顆粒は, 0.6M NaClに溶解しなかった. 一方, リン酸化したミオシンの超沈殿顆粒および対照のミオシンのアクトミオシンゲルは同じ条件では容易に溶解した.
5. 上記の結果は, 砂胃平滑筋筋原繊維中のアクトミオシン系のリン酸化-脱リン酸化の過程が, アクチン-ミオシンの結合を強めることを示唆している.