慢性関節リウマチに続発性アミロイドーシスを合併した1剖検例を報告する症例は, 56歳, 女性で, 4年以上当院外来にて慢性関節リウマチ (stage IV, class 3) (以下RA) として経過観察中であったが, 昭和56年12月腹痛, 嘔気, 嘔吐を主訴として入院した. 入院時, 軽度の意識障害と著明な脱水を認めたが, 腹部腫瘤等は認めなかった. 検査所見では, Total-proteinの著明な低下と, BUN, creatinineの上昇を認めた. 腹部症状の発現が急激であること, またRAが基礎疾患として存在していたことよりmalignant RAが疑われた. 抗生物質, 補液, プレドニソロン等で全身状態の改善をはかったが, 意識状態徐々に低下, また腎不全も進行, 肺炎を併発し, 死亡した. 死後, 解剖を行った. その結果, 関節にはフィブリン沈着やリンパ球の浸潤がありRAの所見がみられたが, 脳, 心, 肺, 肝, 腎, 脾, 消化管などほとんどの臓器の中-小血管内腔に著明なアミロイド沈着を認め, RAに続発性アミロイドーシスを合併したものと診断された. 従来RAに続発性アミロイドーシスは合併しやすいとされていたが, 系統的にアミロイドの検索がなされた例は少なく, さらにその経過は5-10年と長期にわたるとされているにもかかわらず本症例は約1カ月ときわめて短かく, 臨床的にはmalignant RAが疑われた症例であり, 今後malignant RAの診断には続発性アミロイドーシスとの鑑別も必要であることを示唆する1例と思われた.
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