抄録
PTCDを利用した胆汁浮遊細胞診 (以下胆汁細胞診と略) は現在広く行われているが, 採取細胞が少なく, 胆汁による細胞の変性という問題点がある. これらの欠点を補うために, 著者は経皮経肝的胆管ドレナージ (以下PTCDと略) からの胆道擦過細胞診 (以下擦過細胞診と略) を開発した. 擦過細胞診においては, 新鮮な変性の少ない細胞が多数採取され著明な診断率の向上を認めた.
胆道系の良性・悪性疾患74例の同一症例に胆汁細胞診, 擦過細胞診を行った. 胆汁細胞診では63.5%の正診率であったが, 擦過細胞診では93.2%の正診率であった. 悪性疾患についてみると, 胆汁細胞診では52.1% (25/48) であったが, 擦過細胞診では93.8% (45/48) であった. 胆管癌, 膵頭部癌, 十二指腸癌, 胃癌再発の悪性疾患において特に高い正診率であった.
胆道系疾患の診断に, 胆道擦過細胞診は非常に有用な方法である.