順天堂医学
Online ISSN : 2188-2134
Print ISSN : 0022-6769
ISSN-L : 0022-6769
原著
神経ベーチェット病の病理学的研究
林 博俊
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 31 巻 1 号 p. 66-80

詳細
抄録

神経ベーチェット病は, ベーチェット病の中でも臨床経過が長く, かつ重篤で, 20歳から40歳台の働き盛りの男性に多い. その病理学的特徴は, 脳幹に主座をもつ脱髄病変の目立つ再発性の非特異的播種性髄膜脳炎で, 肉眼的には種々の程度の萎縮がみられ, 組織学的には好中球の出現や膿瘍の形成といった急性炎症像から, 小軟化巣, 脱髄, グリアの増生, 好銀線維の増加といった陳旧性病変までみられ, かつ両者が混在するのが特徴的である. 感染性脳病変との対比で, 陳旧性病変における間葉系, 特に膠原線維の反応が弱く, ウイルス脳炎の如き神経細胞の選択的障害や核内封入体などみられず, 一部の症例ではあるがウイルスは検出されなかった. 血管病変としては, 血管周囲性のリンパ球, 組織球の浸潤と層状線維化が特に静脈系に目立ったが, 内膜側は保たれており, 閉塞性病変は認められなかった. また, 小膿瘍内の小血管にフィブリン血栓を認めたが, 血栓形成に先行すべき一次性血管炎はみいだせず, 結局, 血栓は二次的なものと考えられた. また, 軟化巣や脱髄病変および炎症性病変と連続性をもたない神経線維間の泡沫細胞の出現が認められたことと, 上記の血管病変の性格から, 何らかの原因による髄鞘の崩壊に始まる一連の組織病変の発生機序が示唆された.

著者関連情報
© 1985 順天堂医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top