順天堂医学
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原著
川崎病171例の臨床的検討
金田 吉男井上 成彰井埜 利博津田 正晴古川 漸加藤 英夫
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1985 年 31 巻 1 号 p. 81-91

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抄録

昭和48年3月から昭和58年7月までの約10年間に順天堂大学小児科に入院した川崎病 (mucocutenaous lymphnode syndrome) 患児の171例 (男児97例, 女児74例) の疫学, 検査成績, 合併症および後遺症の頻度について検討した. 成績: 1) 男女比は1.3:1.0でやゝ男児に多く, 2歳までの発症が171例中95例 (55.5%) と過半数を占め, 5歳以下が全体のほぼ95%であった. 2) 年度 (月) 別発生数では昭和54年度の1月から6月までの間および昭和57年度の1月から5月までの間にとくに多発した. 3) 順調に経過した症例および再燃した症例では病初期にCRP, 血沈値およびCH50は高値であり, 経過とともに正常化した. しかし再燃した症例では再燃時, これらの値が再び高値となり, 高値を持続する傾向にあった. 心合併症をみた14例中7例で低補体価を示し, その後, 正常および高値となった. 4) 血清免疫グロブリン (IgG, IgA, IgM, IgE) はいずれも急性期に上昇し, 経過中, 比較的高値を持続した. 5) 血中免疫複合体のうち, IgGのimmune complexを含む分画は順調に経過した症例では病初期に高値を示し, 経過とともに低下した. しかし再燃したが心合併症をみなかった症例および心合併症をみた症例では病初期に低値で, 経過とともに上昇し, 再燃時高値となった. また死亡例では経過中高値が持続した. なおIgM, IgAおよびC3のimmune complexを含む分画の値の変動はIgGのimmune complexの変動とほぼ同様であった. IgEのimmune complexを含む分画は病初期に高値で, 経過とともに低下した. しかし死亡例ではIgEのppindexの高値が持続した. 6) 急性期における合併症の頻度: 急性期に心エコーを行った67例中21例 (31.3%) に心合併が認められた. 171例中, 中枢神経系症状は17例 (9.9%), 関節症状は7例 (4.1%), 胆のう腫大は4例 (2.3%), その他, 血小板減少症, ネフローゼ症候群, 虹彩炎, 抗核抗体陽性, クームステスト陽性例が認められた. 7) 急性期に心エコーで心合併をみた21例の病週は多くは第1-第3病週にあり, とくに第2病週にピークを認めた. 本症の回復後, 171例のうち30例 (17.5%) に心および冠動脈の後遺症が認められた. 8) 心合併症をみた症例では心合併をみなかった症例に比して概して血小板数の増加を認め, その病日も長かった. 以上の結果, 川崎病はある種の感染症が発端となる免疫性疾患であろうと思われた.

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© 1985 順天堂医学会
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