順天堂医学
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31 巻, 1 号
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目次
Contents
特集 高齢化と医療
  • 飯塚 礼二
    1985 年 31 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    わが国においても長寿化がすすむと同時に脳の老化にもとづく精神症状, なかでも痴呆についての諸問題がとりあげられるようになった. この論文では脳に出現する主要な老化性病変についての概要を述べ, ついでそれらの脳病変を基盤とする精神症状を, 老年痴呆を例として説明した. 即ちその頻度, 臨床症状, 及び痴呆に随伴する治療可能な種々の精神症状について解説した. 終りに老年痴呆の治療について, 各症状毎に対症的に用いる薬剤をあげ, ついで現在最も具体的に重要な問題であるケアに関してその実体と理念を説明した.
  • 荒畑 喜一, 山本 真理, 小宮 忠利, 佐藤 猛, 楢林 博太郎
    1985 年 31 巻 1 号 p. 8-18
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    最近3年間に意識障害で当科に入院した186症例について検討した. このうち60歳以上の年齢層が121症例 (65%) を占めた. その原因疾患別内訳では, 脳血管障害 (CVA) 71, パーキンソニスム (PA) 26, 脳炎・髄膜炎7, 脳腫瘍6, 代謝性脳症5, てんかん3症例などであった. 60歳以上の症例が, 個々の疾患に占める比率では, PAが90%と最も高く, 次いでCVA77%, 脳腫瘍54%, 代謝性脳症42%, 脳炎・髄膜炎29%, てんかん23%の順であった. CVAのうち68%は梗塞であり, とくに中大脳動脈梗塞例では初発時の意識障害の程度と無関係に予後不良であったことが注目された. 60才以上のPAに意識障害を併発した症例では, その主な原因として肺炎42%, 抗パ剤による薬剤性23%などがあげられた. これらのPAでは, 意識障害の回復後にもPAの重症度は悪化したレベルにとどまる傾向を示した. 脳炎・髄膜炎が高齢者に見られることは, 決して稀で無いことも今回の調査で示された. 以上, 高齢者における意識障害の原因は多岐にわたることが明らかにされたが, これらの疾患の予後を向上させる観点から, とくに症例ごとの適切な診断と対策が速やかに講じられるべきことを強調した.
  • 中田 八洲郎
    1985 年 31 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    老年人口の増加に伴ない, 循環器領域においては動脈硬化に起因する疾患が相対的に増加しており, 特に冠状動脈硬化を基盤として発症する虚血性心疾患が近年増加している. この虚血性心疾患において, 比較的高齢である70歳以上の例と70歳未満例の2群を比較検討したところ, 高齢者群においては, 心筋硬塞の急性期に重篤な合併症を併発し易く, このため死亡率も高い. しかしながら狭心症や陣旧性心筋硬塞などの慢性の虚血性心疾患では外科的治療を含めて, 一般に治療に対する反応は良好であり, 両者間で差を認めなかった. このため高齢者においては, 急性期の治療がより重大な意義を有する.
  • 稲富 恵子
    1985 年 31 巻 1 号 p. 24-30
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    高齢者人口の増加にともない, 開塞性換気障害, 拘束性換気障害, 肺循環障害をもつ人口の増加が見込まれている. 事実, 体動時息切れを訴え呼吸不全の状態で来院される症例は増加の傾向にある. 動脈血ガス分析で, PO260mmHg以下, PCO2については50mm Hg以上の場合呼吸不全が存在すると考えられる. 呼吸不全は急性と慢性に分けられるが, それぞれに多くの原因がある. 今回は加齢にともなう呼吸機能の変化と慢性呼吸不全をきたす疾患のうち老人に多くみられる肺気腫症について述べた.
  • 吉田 政彦
    1985 年 31 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    腎は加齢に伴ない重量は減少し70歳台では30歳台の約3/4になる. 腎糸球体の硝子化が進行し, 40歳以上では10%をこえることがある. 尿細管は萎縮し, 間質が拡大してくる. この形態的変化により腎機能の低下がみられる. 糸球体濾過値は加齢と共に直線的に低下し, 30歳の機能を100とすると80歳では50まで低下する. 臨床的に老化の良い示標として有用である. 腎疾患としては, 腎硬化症, 糸球体腎炎, 糖尿病性腎症, 尿路感染症などが主要病変として挙げられる. 原疾患が何んであれ, 加齢因子が加味され緩慢な進行を示して腎不全に至る. 近年, 高齢者の透析例が増加している. 合併症が多く不安定透析となることが多く, 死亡率も高い. 高齢者に腎病変が見出されたとき, 腎機能を含めた精査を施行し, 加齢による腎変化を考慮して適切な治療を行い腎不全への移行を遅らせる努力が必要である.
  • 橋本 博史
    1985 年 31 巻 1 号 p. 37-43
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    高齢者に好発するリウマチ性疾患として, リウマチ性多発筋痛と側頭動脈炎があげられる. いずれも55歳以上に発症するが, 臨床症状がきわめて類似し, 両者は近似した疾患と考えられる. 最も危惧すべき病態は視力障害で, その防止にステロイドが有効である. 症例を呈示し, 臨床的特徴と鑑別診断について述べた. ついで, 病因論的に自己免疫によると考えられる代表的なリウマチ性疾患のRAとSLEをとりあげ, 加齢に伴う病像の相違とそれに伴う臨床上の問題点について考察した. いずれの疾患も, 妊娠可能年齢の女性に好発するが, 高齢発症例は男性の相対的増加がみられ, その臨床病態は非定型的で, 軽症, 不全型が多い. その要因として, 加齢に伴う免疫能の変化と性ホルモン, 環境因子などの影響が考えられた. 臨床的には他疾患との鑑別診断が重要視され, また, 治療に際しては, 加齢に伴うriskを考慮した保存的治療管理が重要と考えられた.
  • 柴山 久雄
    1985 年 31 巻 1 号 p. 44-50
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    老人を主体とする有隣病院において昭和53年より年1回定期的に入院患者の個人調査を行ってきた. 昭和59年の調査時における入院患者は148名, 年齢は最低39歳, 最高92歳, 平均77.2歳で, 女性 (75.7%) が多く, 老人保健法の対象となる70歳以上の患者が, 79.7%におよぶ. 入院のための主要疾患は脳神経系が多く, これに多くの合併症を伴う. 在院期間は平均4.5ヶ月を示し, 痴呆を持つ者が増加し, リハビリテーションの障害となっている. これらの情況と併せて入院医学管理料等老人保険の問題点を述べる.
  • 乾 道夫, 徳留 省悟
    1985 年 31 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    監療医務の立場からみると老人の病理は即ち老人の急死の病理が主体を占めている. 形態学的にも高齢化因子によるものが原因の多くを占めていることは勿論である. 老人の急死の大多数は心血管系疾患, 特に虚血性心疾患及び脳血管障害による脳出血により代表されている. 両者はいずれも動脈硬化症や高血圧症の加齢的因子によるものである. これとは別に最近では慢性アルコール性肝障害や小葉性肺炎等の死亡例も増加の傾向にある. 環境因子の関与も無視出来ない.
  • 竹内 達夫
    1985 年 31 巻 1 号 p. 55-65
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    我が国は, やがて本格的高齢化社会, むしろ超高齢化というべき社会に突入する. 外国に比べ老齢化人口比は高く, ピーク時には中位推計でも全人口の21.8%, 約2,795万入に達する. 老人はその心身の特性から“病気がち”であり, やがて多くの病んだ老人をかかえることが想像される. したがって人々が健やかな老後を迎えるためには, 従来の保健医療のあり方が根本的に問われ, かつ見直されなければならない. また, 高齢化社会において, 限られた資源をいかに公平に再配分するか大きな問題も残されている. かかるとき老人の健康の確保, 医療の確保をいかにすべきか, そのための準備を少しでも早く行わなければならない. この準備の1つとして老人保健法が創設された. 老人保健法を中心に高齢化社会を展望しつつ, これからの保健医療についてのべる.
原著
  • 林 博俊
    1985 年 31 巻 1 号 p. 66-80
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    神経ベーチェット病は, ベーチェット病の中でも臨床経過が長く, かつ重篤で, 20歳から40歳台の働き盛りの男性に多い. その病理学的特徴は, 脳幹に主座をもつ脱髄病変の目立つ再発性の非特異的播種性髄膜脳炎で, 肉眼的には種々の程度の萎縮がみられ, 組織学的には好中球の出現や膿瘍の形成といった急性炎症像から, 小軟化巣, 脱髄, グリアの増生, 好銀線維の増加といった陳旧性病変までみられ, かつ両者が混在するのが特徴的である. 感染性脳病変との対比で, 陳旧性病変における間葉系, 特に膠原線維の反応が弱く, ウイルス脳炎の如き神経細胞の選択的障害や核内封入体などみられず, 一部の症例ではあるがウイルスは検出されなかった. 血管病変としては, 血管周囲性のリンパ球, 組織球の浸潤と層状線維化が特に静脈系に目立ったが, 内膜側は保たれており, 閉塞性病変は認められなかった. また, 小膿瘍内の小血管にフィブリン血栓を認めたが, 血栓形成に先行すべき一次性血管炎はみいだせず, 結局, 血栓は二次的なものと考えられた. また, 軟化巣や脱髄病変および炎症性病変と連続性をもたない神経線維間の泡沫細胞の出現が認められたことと, 上記の血管病変の性格から, 何らかの原因による髄鞘の崩壊に始まる一連の組織病変の発生機序が示唆された.
  • 金田 吉男, 井上 成彰, 井埜 利博, 津田 正晴, 古川 漸, 加藤 英夫
    1985 年 31 巻 1 号 p. 81-91
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    昭和48年3月から昭和58年7月までの約10年間に順天堂大学小児科に入院した川崎病 (mucocutenaous lymphnode syndrome) 患児の171例 (男児97例, 女児74例) の疫学, 検査成績, 合併症および後遺症の頻度について検討した. 成績: 1) 男女比は1.3:1.0でやゝ男児に多く, 2歳までの発症が171例中95例 (55.5%) と過半数を占め, 5歳以下が全体のほぼ95%であった. 2) 年度 (月) 別発生数では昭和54年度の1月から6月までの間および昭和57年度の1月から5月までの間にとくに多発した. 3) 順調に経過した症例および再燃した症例では病初期にCRP, 血沈値およびCH50は高値であり, 経過とともに正常化した. しかし再燃した症例では再燃時, これらの値が再び高値となり, 高値を持続する傾向にあった. 心合併症をみた14例中7例で低補体価を示し, その後, 正常および高値となった. 4) 血清免疫グロブリン (IgG, IgA, IgM, IgE) はいずれも急性期に上昇し, 経過中, 比較的高値を持続した. 5) 血中免疫複合体のうち, IgGのimmune complexを含む分画は順調に経過した症例では病初期に高値を示し, 経過とともに低下した. しかし再燃したが心合併症をみなかった症例および心合併症をみた症例では病初期に低値で, 経過とともに上昇し, 再燃時高値となった. また死亡例では経過中高値が持続した. なおIgM, IgAおよびC3のimmune complexを含む分画の値の変動はIgGのimmune complexの変動とほぼ同様であった. IgEのimmune complexを含む分画は病初期に高値で, 経過とともに低下した. しかし死亡例ではIgEのppindexの高値が持続した. 6) 急性期における合併症の頻度: 急性期に心エコーを行った67例中21例 (31.3%) に心合併が認められた. 171例中, 中枢神経系症状は17例 (9.9%), 関節症状は7例 (4.1%), 胆のう腫大は4例 (2.3%), その他, 血小板減少症, ネフローゼ症候群, 虹彩炎, 抗核抗体陽性, クームステスト陽性例が認められた. 7) 急性期に心エコーで心合併をみた21例の病週は多くは第1-第3病週にあり, とくに第2病週にピークを認めた. 本症の回復後, 171例のうち30例 (17.5%) に心および冠動脈の後遺症が認められた. 8) 心合併症をみた症例では心合併をみなかった症例に比して概して血小板数の増加を認め, その病日も長かった. 以上の結果, 川崎病はある種の感染症が発端となる免疫性疾患であろうと思われた.
  • --原因別分類, 下垂体機能および治療成績について--
    福田 勝, 清田 明憲, 奥山 輝明, 古谷 博
    1985 年 31 巻 1 号 p. 92-100
    発行日: 1985/03/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    28例の高プロラクチン血症患者に対し原因別に分類し, 各々の下垂体機能に関し検討した. さらにBromocriptineによる治療効果についても検討し次の結果を得た. 1) 高プロラクチン血症患者は下垂体腫瘍群, 薬剤服用群および原因不明群の3群に大別された. 薬剤服用群が12例 (43%) と最も多かった. 2) 下垂体腫瘍群では, 血中PRL値が他群に比べ明らかに高値を示しまた血中FSH値も対照群に比べ有異に低値を示した. 3) 下垂体腫瘍群と原因不明群では, TRHに対するPRLの反応性が低下あるいは欠如していた. 4) 種々の下垂体への負荷試験の結果, 各群共, 下垂体機能はよく保持されていた. 5) 高プロラクチン血症例に対する治療成績は, 28例中14例に排卵が確認された. その内訳は, 下垂体腫瘍群9例中4例排卵, 3例分娩, 薬剤服用群12例中6例排卵, 1例分娩, 原因不明群7例中4例排卵, 2例妊娠中, 1例分娩であった.
抄録
てがみ
編集後記
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