順天堂医学
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特集 高齢化と医療
高齢者における意識障害 : 診断と対策
荒畑 喜一山本 真理小宮 忠利佐藤 猛楢林 博太郎
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1985 年 31 巻 1 号 p. 8-18

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抄録

最近3年間に意識障害で当科に入院した186症例について検討した. このうち60歳以上の年齢層が121症例 (65%) を占めた. その原因疾患別内訳では, 脳血管障害 (CVA) 71, パーキンソニスム (PA) 26, 脳炎・髄膜炎7, 脳腫瘍6, 代謝性脳症5, てんかん3症例などであった. 60歳以上の症例が, 個々の疾患に占める比率では, PAが90%と最も高く, 次いでCVA77%, 脳腫瘍54%, 代謝性脳症42%, 脳炎・髄膜炎29%, てんかん23%の順であった. CVAのうち68%は梗塞であり, とくに中大脳動脈梗塞例では初発時の意識障害の程度と無関係に予後不良であったことが注目された. 60才以上のPAに意識障害を併発した症例では, その主な原因として肺炎42%, 抗パ剤による薬剤性23%などがあげられた. これらのPAでは, 意識障害の回復後にもPAの重症度は悪化したレベルにとどまる傾向を示した. 脳炎・髄膜炎が高齢者に見られることは, 決して稀で無いことも今回の調査で示された. 以上, 高齢者における意識障害の原因は多岐にわたることが明らかにされたが, これらの疾患の予後を向上させる観点から, とくに症例ごとの適切な診断と対策が速やかに講じられるべきことを強調した.

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© 1985 順天堂医学会
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