抄録
頸部求心系が前肢運動ニューロンに及ぼす影響を, 単シナプス法, 細胞内電極法によりネコを用いて検索した. 頸部求心系の刺激としてC2後根神経節, C2頸筋神経を用いた. (1) クロラロース麻酔ネコではtriceps及びbiceps単シナプス反射 (MSR) はC2神経節の条件刺激により促通効果 (10-20msec) とそれに引き続く抑制効果 (50-100msec) を受けた. (2) 脊髄ネコでもほぼ同様の傾向であったが, 対側C2神経節の効果は少なかった. (3) 一方, 無麻酔除脳ネコではtricepsのMSRは主として30-150msecの促通とbicepsでは30-70msecの抑制と相反性効果を認めた. (4) 細胞内記録では, 頸部求心系より3シナプス以上の多シナプス性シナプス後電位 (PSP) が記録された. (5) 除脳ネコにおいて, 頸部求心系よりtriceps運動ニューロンに, 特徴的な短潜時, 小振幅のEPSPとそれに引き続く長潜時, 高振幅のEPSPが記録された. (6) 頸筋神経刺激 (high threshold muscle afferents) により, 脊髄ネコのtriceps運動ニューロンに相反性効果を認めた.