順天堂医学
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原著
拡張型心筋症様の病態を示す虚血性心疾患の超音波学的検討
藤原 直
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1985 年 31 巻 3 号 p. 388-401

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抄録
超音波心断層図にて左室内腔拡張とびまん性壁運動異常を示す虚血性心疾患6例 (I群) と, 拡張型心筋症, 心筋炎後心拡大症およびアルコール性心疾患の26例 (II群) について超音波心断層法による比較検討を行い, さらに5例の剖検心を用いて壁運動異常と心筋病変の対比を行った. 超音波心断層図の左室短軸断面を垂直, 水平に4等分し, 各分節につき収縮期壁厚増加率を参考にして壁運動を定性的に評価した. また両群の壁運動異常の分布の相違を明らかにするために水平2分割による前方2分節, あるいは後方2分節における壁運動異常の不一致性discordanceの有無を検討した. その結果, シネアンジオ検査による冠状動脈病変では, I群の4例が3枝, 2例が2枝病変であり, 全例主要冠状動脈に高度の病変を認めた. Mモード心エコー図ではLVDdの平均値では両群に有意差は認めなかったが, LVDdが75mm以上の著明な左室拡張例はI群には見られず, II群では8例に見られた. 壁運動異常分布では, I群の5例が後方にdiscordanceを示し, 1例はdiscordanceを示さなかった. II群の軽度左室拡張例18例のうち17例がdiscordanceを示さず, 7例はdiscordanceを示したが, うち6例は著明な左室拡張例であった. 前方後方共にdiscordanceを示す例はII群に限られた. 病理学的検討ではI群の1例は壁運動異常と心筋変性, 線維化の程度が良く相関したが, II群の4例中3例では両者に相関が見られなかった.
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© 1985 順天堂医学会
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