順天堂医学
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原著
心臓性急死の臨床的検討
張 念中
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1986 年 32 巻 1 号 p. 41-54

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抄録
順天堂大学循環器内科における1. 院外急死16例, 2. 入院中の急死24例及び3. 心臓カテーテル. シネアンジオ検査後経過追跡中の心臓性急死例66例について, 心臓性急死の実態を知るために臨床的検討を行い, 以下の結果を得た. 1. 院外急死例の治療成績は極めて不良であり, 16例のうち僅かに1例のみが救命し得たにすぎない. 2. 入院中急死例の3分の2は心筋梗塞例であり, 不整脈の治療のみならず, 急性期の冠再灌流治療の積極的応用が必要と思われる. 3. 心臓カテーテル・シネアンジオ検査後経過追跡中の心臓性急死例は66例であり, 冠状動脈疾患が過半数 (54.5%) を占めた. 左主幹部病変例, 中枢側病変, 特に左前下行枝中枢側病変例, 多枝病変例, 側副血行路発達不良例, 高度. 広範左室壁運動異常例に急死の多い傾向が認められた. また, 弁膜症13例 (19.7%) の急死例の大部分は大動脈弁疾患を有する著明な左心室拡張・肥大の症例であった. 心筋疾患の急死は重症の心室性不整脈を有する拡張型心筋症5例と肥大型心筋症1例であった. 先天性心疾患急死例は, Fallot氏四徴症成人例などで, 多くは手術の時期を逸した例と考えられた. 大血管疾患の急死例は動脈瘤破裂が多く, 大部分は高血圧を伴う症例であった. 高血圧性心疾患の急死が1例認められた. 急死の予防の為には, 上記の如き症例に対する外科治療を含めた更に適切な治療が必須であるが, 急死例の多くを占める冠状動脈疾患に対しては, 一次予防が最も重要であることを強調したい.
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© 1986 順天堂医学会
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