抄録
モノクローナル抗体とフローサイトメトリーによるimmuno-monitoringに加えて, 免疫グロブリン遺伝子, ならびにT細胞レセプター遺伝子を利用した分子生物学的方法を, リンパ球系腫瘍の起源とクローナリティーの解析に用いることを試みた. SJLとAKRマウスに自然発生した腫瘍を調べてみたところ, SJLでは腫瘍細胞はTHY-1陽性細胞とB220陽性細胞の両方から成っていること, T細胞の大部分はL3T4陽性細胞であるがLYT-2陽性細胞もあり, 多様な細胞群から構成されていることが明らかになった. しかし分子生物学的解析から免疫グロブリンの重鎖遺伝子の, クローナルな再構成が認められたことから, SJLに発生する腫瘍はB細胞由来で, T細胞はそれに反応して増殖しているものと考えられる. 一方AKRに発生する腫瘍はすべてTHY-1陽性であるが, T細胞の分化抗原であるL3T4, ならびにLYT-2の発現をみると, 各マウス間は勿論のこと, 同一マウスでも原発と転移先のリンパ節の間で一定の傾向が見られなかった. またT細胞レセプターの再構成のパターンから, 同一マウス内で異なる表面抗原マーカーを持っていても同じクローンである場合や, 表面抗原は同じでも, 異なるクローンであったりする場合があることが明らかになった. このように, 従来の細胞表面抗原による方法に加えて, 分子生物学的手法を用いた解析が, リンパ球系腫瘍のモニタリングに必要であると思われる.