抄録
これまで行ってきた消化管X線診断学の研究を振り返り, 診断の現状を述べ今後の進むべき方向を探ってみた.
胃では, 術後像の検討と各種撮影法の解析から検査理論を確立し, その中に二重撮影法を組み込み体系化した. 同じ手法で, 全消化管のX線診断学を集大成し, 消化管早期癌の診断は向上した. 一方, 胃潰瘍にみる変形の分析から変形学の基礎を作り, 点・線・面の要素で読影し解析する全消化管に共通する変形学, 比較診断学へと展開させた.
消化管早期癌X線診断の限界は, 現状は胃では1cm, 食道では2cmである. しかし, 肉眼診断とはまだ差があり, 診断の向上が望まれる. 大腸では, 小隆起に対応し過ぎている. 努力をさらに小陥凹性病変に向ける必要がある.
炎症性腸疾患は, 所見の解析と病変の分布様式から十分診断可能であるが, 病変が出没, 消長するものに対しては, 病態を流動的にとらえる動的診断学が必要であろう.