StagelV胃癌の予後不良因子と治療効果について, 302例のStagelV胃癌切除例を規定因子の組み合わせにより15組に分けて検討した. StageIV進行度規定因子は癌腫の直接他臓器浸潤S
3, 遠隔リンパ節転移N
3-4 (+) , 腹膜播種P
1-3, 肝転移H
1-3であり, これらが複合して存在する症例が半数を占めたことにより治癒切除率は10.9%と, 極めて低率であった.
姑息的胃切除例が多くみられたが, これらは補助免疫化学療法を目的とした主病巣切除例であった. しかし, これらの中には手術後きわめて短期間に死亡した症例も少なくなく, 主病巣切除の適応にも限界があることが示された. 切除の適応から除外されたのは3および4因子複合併存例で, H
1-3因子を有する症例群であり, 本研究で作成したStageIV-3亜分類のIV-c群である.
3, 4因子例ならびにStageIV-c例の各々の50%生存月数は4.2カ月, 5.7カ月と, 予後は他に比べ著しく不良であった. 特に手術直接死亡率は10.3%と高率を示し, 治療内容も減量手術の目的である主病巣切除自体がきわめて困難であった症例群であり, なおかつ, 切除後の補助免疫化学療法の効果も十分示されない短期間に死亡した症例が主であった.
生存率ならびに癌死例の平均生存月数の検討から, 予後への影響度はS
3, N
3, P
1, H
1 (N
4), P
2-3, H
2-3の順に不良となることが判定された. 予後良好な因子はS
3, N
3, P
1であり, 非治癒切除因子のP
1も治癒切除因子S
3, N
3に準じた予後推移が示された. 予後不良な因子であるH
1 (N
4), P
2-3, H
2-3も単一因子, ならびに2因子複合併存例では手術による予後向上が示され, 十分なS
3臓器合併切除, リンパ節郭清を伴う胃切除手術により, 補助免疫化学療法の良好な結果が示される症例群と考えられた.
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