順天堂医学
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33 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 関根・福島・白壁・古谷 四教授定年退職記念講演
  • -筋研究36年を顧みて-
    関根 隆光
    1987 年33 巻2 号 p. 158-168
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    1950年著者によって同定されたミオシンの高反応性SH基・SH1をめぐって, 筋収縮の分子機構研究の歩みのうち, 当教室のスタッフによって進められた重要な研究を紹介した. まずSH1を含むペプチド, 続いてATPによって内部から露出してくるSH2を含む一次構造が決定され, ミオシンの構造と機能研究の最初の一歩が踏み出された. この両SH基はATPによって接近し, 化学的に両者を架橋すると, ATPを活性中心に閉じ込めることが発見されたので (Yount), 光アフィニティATPアナログを合成して, 光照射によってATP結合サイトに結合させ, その近傍の一次構造を決定した. 次いでビオチン・アビジン法, および電顕写真からの三次元像再構成法で, SH1サイトの二次元・三次元局在が決定された. 筋収縮の分子機構の假説のうち, 頭部の内部構造変化説を実証するため, SH1にラベルしたDNPからの50kDa断片への光架橋を調べた. その結果ミオシンの頭の先の1/3の部分の構造は収縮中も変らず, 20kDa断片を欠いた“small S1”もアクチンとの相互作用が元のS1と変わらないことから, 今後柄の部分の20kDa断片の研究が重要になるであろうことを結論した.
  • 福島 一郎
    1987 年33 巻2 号 p. 169-178
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    公衆衛生活動は, 人の世の保健・医療上のあらゆる格差を何とかして埋めたいと念願する人々の, 愛の実現を目指した社会への働きかけである. 医学あるいは医療に係わる者なら誰しもの心に潜む情念であろう. 医師の選択する分野としては, 少数派の公衆衛生専門職の道を選んで以来, 辿り来たった私のこれまでの実践活動を回顧し, その経験を踏まえて, 医学教育に携わって来て退任するにあたり, 今後の私立医科大学における公衆衛生教育のあり方について私見を述べる.
  • 白壁 彦夫
    1987 年33 巻2 号 p. 179-184
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    これまで行ってきた消化管X線診断学の研究を振り返り, 診断の現状を述べ今後の進むべき方向を探ってみた. 胃では, 術後像の検討と各種撮影法の解析から検査理論を確立し, その中に二重撮影法を組み込み体系化した. 同じ手法で, 全消化管のX線診断学を集大成し, 消化管早期癌の診断は向上した. 一方, 胃潰瘍にみる変形の分析から変形学の基礎を作り, 点・線・面の要素で読影し解析する全消化管に共通する変形学, 比較診断学へと展開させた. 消化管早期癌X線診断の限界は, 現状は胃では1cm, 食道では2cmである. しかし, 肉眼診断とはまだ差があり, 診断の向上が望まれる. 大腸では, 小隆起に対応し過ぎている. 努力をさらに小陥凹性病変に向ける必要がある. 炎症性腸疾患は, 所見の解析と病変の分布様式から十分診断可能であるが, 病変が出没, 消長するものに対しては, 病態を流動的にとらえる動的診断学が必要であろう.
  • 古谷 博
    1987 年33 巻2 号 p. 185-191
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    産婦人科医として40数年を体験し, その大部分を大学に在籍した私は, その最後の15年間を順天堂大学でお世話になった. 省みると私の世代は, 戦前に教育をうけ, 終戦からの復興期・高度成長期, 経済社会の成熟期を経て現在は低成長期と, それぞれの時代を体験してきた. また大学の中にあって, 各世代の若い人達と仕事をして来たし, 臨床・教育・研究・学会活動のあり方も, それなりに変動をつづけて来た. その最終のしめくくりを本学ですごさせて頂いた恩恵は, 何にもかえ難い生涯の賜であった. 産婦人科医の時代の流れと, その中での私の仕事を回顧し, 本学産婦人科の発展を祈ってやまない.
原著
  • 高橋 邦丕
    1987 年33 巻2 号 p. 192-205
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    頭蓋内圧波の出現に関与する神経機構を調べることを目的とし, 脳内 (青斑核・縫線核・吻側網様体核, およびCholinoce ptivepontine area: CPA) より単一ニューロンの発射活動を導出・記録し, 頭蓋内圧 (ICP) の変化との関連を検討し次の結果を得た. 1) B波の出現に際し, 縫線核・青斑核群ならびに吻側網様体核のニューロンでは圧変動に先行, あるいは同期してスパイクの発射頻度が変動した. 2) A波の発現時には青斑核ニューロンは, 圧の上昇相に先行して発射活動は減少し始め, プラトー相では極度の低下を来たした. また下降相に先行して発射頻度は再び増加し始め, 低値相では高頻度の発射活動が維持された. 3) 青斑核群にGlutamateの微量注入を行うとICPの下降が見られ, CPAにCarbacholを注入するとICPの上昇が誘発された. 4) CPAを電気刺激すると青斑核ニューロンの自発発射は著明に抑制され, CPAと青斑核群間の抑制性神経結合が判明した. 5) A波発現時のCPAニューロンの発射活動は, 先の青斑核ニューロンと鏡像を呈しプラトー相で発射頻度の増加を来たした. 以上の結果から, 圧波のB波とA波の発現に関与する神経機構は, 異なる可能性があることを論じた.
  • --特にブラッシング細胞診における胆道良性異型細胞と癌細胞の相違について--
    桜井 秀樹
    1987 年33 巻2 号 p. 206-218
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    胆道癌の細胞診診断成績の向上を目指して新鮮で豊富な細胞の得られる, PTCDからのブラッシング細胞採取法を用いて, 正常細胞・良性異型細胞・癌細胞について詳細な細胞学的検討と, 細胞異型度の数量化を行い各検査項目間の優位性を検討した. (1) 細胞群所見: 胆道癌は高度の細胞, 核の重積性, 高度の大小不同性がみられた. 一方, 良性異型細胞は正常細胞に比べて明かに重積性・大小不同性を認めたが, 癌細胞に比べその程度は低かった. (2) 細胞および核の面積: 癌細胞・良性異型細胞ともに大型で, 両者に有意の差はみられなかったが, 良性異型細胞には癌細胞にみられた各々核360 (1221μ2), 細胞850 (2882μ2) を超えるものはなかった. (3) 核縁: 癌細胞・良性異型細胞ともに肥厚するが, 癌細胞では不均等な高度肥厚が目立ち, 良性異型細胞では不均等な軽度肥厚が多かった. (4) クロマチン: 癌細胞・良性異型細胞ともにクロマチンは増量していたが, 良性異型細胞は均等分布を示しており, 癌細胞にみられた不均等分布はほとんど認められなかった. (5) 核小体の大きさおよび数: 大きさは正常細胞・良性異型細胞ともに小さく, 癌細胞にみられた最大長径4 (4, 16μ) 以上のものはなかった. 癌細胞・良性異型細胞ともにその数に有意性は認めなかった. 各項目における癌細胞と良性異型細胞との異型度の差を数量化し, 各項目間の優位性をみると, 1) 核小体の大きさ, 2) 細胞, 核の重積性, 3) クロマチンの分布および性状, 4) 核縁の肥厚に違いがみられた. 以上の項目を重要視し, 個々の細胞所見を捉えることで診断をより確実にするものと思われた.
  • 高谷 純司
    1987 年33 巻2 号 p. 219-233
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    従来急性心筋梗塞 (AMI) や不安定狭心症 (U-AP) に対しての, 冠状動脈造影 (CAG) は禁忌とされていたが, 近年これらの疾患に対して緊急にCAGが施行され, 急性期病態の正確な把握と冠状動脈血栓溶解術 (PTCR) が臨床的にきわめて有用であると認められている. 今回の研究は発症約6時間以内のAMIまたはU-APと診断され, 緊急CAGを施行した43例について臨床的検討を加え, 次の結果を得た. (1) AMIで緊急CAGを施行した34例中30例にPTCRを試み, 24例 (80%) に再開通を, また4例は自然開通を認めた. PTCR成功例の慢性期左室造影では局所心筋障害と駆出率の有意な改善 (P<0.01) をみた. (2) AMI後の合併症についての検討では, PTCR成功例 (含自然開通例) はPTCR未施行例またはPTCR不成功例に比べ, 重症不整脈・うっ血性心不全などの出現はほとんど認められなかった. (3) U-AP 9例に対してのCAGでは早期に病変を把握した結果, 心筋梗塞へ移行する前に全例治療し得た. 全例中1例に緊急A-Cバイパス術 (CABG) を, 3例に1-2日以後での準緊急CABGを, 1例に緊急経皮的冠血管拡張術 (PTCA) を施行し心筋障害を呈する前に軽快した. 以上の如く緊急CAGはAMI, U-APに対しその診断的価値は大きく, 特にPTCRはAMI中でも左主幹動脈や左前下行枝近位部閉塞による心原性ショックの患者に対しても, 左室補助循環や大動脈内バルーンパンピング (IABP) 以上に, 冠閉塞の再開通という原因の直接的除去による第一義的救命治療法で, 臨床上きわめて有用であると確信された.
  • 鈴木 はる江
    1987 年33 巻2 号 p. 234-244
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    副腎髄質から分泌されるカテコールアミン (CA) は, 循環や血糖調節に関与する重要なホルモンであり, 交感神経によりその分泌が調節されている. これまで副腎髄質組織中のアドレナリン (A) とノルアドレナリン (NA) の含有量, 末梢血中のNA濃度は加齢に伴い上昇することが明らかにされているが, 副腎髄質からのCA分泌速度の加齢に伴う変化については不明である. 本研究では生後約100-900日の麻酔ラットを用い, 副腎髄質から副腎静脈に分泌されるCA量を副腎静脈血を直接採取して測定し, 副腎からのCA分泌速度が加齢に伴い如何なる変化を示すのか調べた. さらに副腎を支配する交感神経を単一線維に分離し, その遠心性放電活動の加齢変化についても調べた. 生後100日においてCA分泌速度は, A 26.7±2.9, NA 4.01±0.77ng/kg/分を示し, いずれも生後300日頃より加齢に伴い増大し, 生後800-900日で生後100日の2-4倍高いレベルに達した. 副腎交感神経単一線維活動は, 生後100日において1.35±0.17imp/秒を示し, 加齢に伴いCA分泌速度と同様に増大した. この結果から, 加齢に伴い副腎交感神経活動が増大し, それによって副腎からのカテコールアミン分泌も増大することが示唆された.
  • 卜部 元道
    1987 年33 巻2 号 p. 245-259
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    StagelV胃癌の予後不良因子と治療効果について, 302例のStagelV胃癌切除例を規定因子の組み合わせにより15組に分けて検討した. StageIV進行度規定因子は癌腫の直接他臓器浸潤S3, 遠隔リンパ節転移N3-4 (+) , 腹膜播種P1-3, 肝転移H1-3であり, これらが複合して存在する症例が半数を占めたことにより治癒切除率は10.9%と, 極めて低率であった. 姑息的胃切除例が多くみられたが, これらは補助免疫化学療法を目的とした主病巣切除例であった. しかし, これらの中には手術後きわめて短期間に死亡した症例も少なくなく, 主病巣切除の適応にも限界があることが示された. 切除の適応から除外されたのは3および4因子複合併存例で, H1-3因子を有する症例群であり, 本研究で作成したStageIV-3亜分類のIV-c群である. 3, 4因子例ならびにStageIV-c例の各々の50%生存月数は4.2カ月, 5.7カ月と, 予後は他に比べ著しく不良であった. 特に手術直接死亡率は10.3%と高率を示し, 治療内容も減量手術の目的である主病巣切除自体がきわめて困難であった症例群であり, なおかつ, 切除後の補助免疫化学療法の効果も十分示されない短期間に死亡した症例が主であった. 生存率ならびに癌死例の平均生存月数の検討から, 予後への影響度はS3, N3, P1, H1 (N4), P2-3, H2-3の順に不良となることが判定された. 予後良好な因子はS3, N3, P1であり, 非治癒切除因子のP1も治癒切除因子S3, N3に準じた予後推移が示された. 予後不良な因子であるH1 (N4), P2-3, H2-3も単一因子, ならびに2因子複合併存例では手術による予後向上が示され, 十分なS3臓器合併切除, リンパ節郭清を伴う胃切除手術により, 補助免疫化学療法の良好な結果が示される症例群と考えられた.
総説
  • 中山 有子, 志村 直人, 有阪 治, 藪田 敬次郎
    1987 年33 巻2 号 p. 260-266
    発行日: 1987/06/10
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    近年の遺伝子工学 (遺伝子組み変え) の進歩により, 合成ヒト成長ホルモン (hGH) の大量生産が可能となった. 他方, 成長ホルモン分泌不全症の診断法は著しく進歩し, 従来の検査法では成長ホルモン分泌不全が証明されなかった低身長児でも, 何らかの成長ホルモン分泌異常が認められる場合のあることが明らかとなってきた. 現在, どのような低身長児がhGH治療の適応となるのかを決定することは, 小児科医にとって重要な問題である. 本稿では, 最近の低身長児の診断法の進歩およびhGH治療の適応について, 当科での診療を紹介しながら, hGH治療に関する最近の知見を解説したい.
抄録
てがみ
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編集後記
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