抄録
ヒトの生殖過程は極めて巧緻なメカニズムの上に成立しているが, にもかかわらず, ある割合の生殖のロス (reproductive wastage) が存在する. これらは臨床上, 不育症あるいは習慣流産として呼ばれることもあるが, 総合的な検索によって主たる病因が判明することもある反面, 従来原因不明とされた症例も数多く存在した.
今日の免疫学の発展は, 生殖機構において〈免疫〉は欠くことの出来ない一つの機序・機構であることを次々と証明して来たが, 不育症の一部原因にも, この免疫機構が深く関わっていることが判明した. この機構を熟知した上での不育症の免疫療法は, 現在漸く端緒についたばかりであるが, 本稿ではそれらの臨床成績についてまとめた.