順天堂医学
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原著
[MRL/lpr→MRL/n] 骨髄キメラに伴うgraft versus host病の細胞免疫学的解析
坂本 善郎広瀬 幸子
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1990 年 35 巻 4 号 p. 495-506

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抄録

MRL/lprマウスは常染色体劣性のlpr遺伝子の効果により, 異常なリンパ球の増殖を伴うリンパ増殖症やSLE様の自己免疫疾患, さらには間質性肺炎に類似した肺病変を自然発症するマウスである. このマウスの骨髄細胞を主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) をはじめ他の遺伝的背景が全て同じであるが, lpr遺伝子は存在しないcongenic MRL/nマウスに放射線照射後移植すると, 著明なwasting syndromeと脾の萎縮を伴うgraft versus host病 (G VHD) が発症した. このGVHDを発症した [MRL/lpr→MRL/n] 骨髄キメラマウスの肺について検索したところ, MRL/lprマウスにみられるような肺病変が発症していることを見出した. このような肺病変と脾病変に浸潤する細胞に関してflow cytometryを用いて細胞免疫学的に検討したところ, MRL/lprマウスの肺病変にはMRL/lprマウスの脾やリンパ節に増殖しているlpr細胞が多数浸潤しており, これはリンパ増殖症の一病態と考えられたが, 骨髄キメラマウスにみられた肺病変にはこれらはなく, 多くがNK細胞であった. 以上の事実からこの骨髄キメラマウスの肺病変は, GVHDの一病態であること, またその発症のeffector細胞としてNK細胞の重要性が示唆された.

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© 1990 順天堂医学会
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