順天堂医学
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原著
胃上部 (C領域) 早期癌のX線診断学に関する研究
最所 大輔加治 文也浜田 勉
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キーワード: 診断, 噴門部癌, 胃上部癌
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1990 年 35 巻 4 号 p. 507-515

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抄録

胃上部 (C領域) における早期癌の診断を向上させるために, 同領域の早期癌83例86病変 (噴門部癌19例20病変を含む) について, 食道胃接合部から癌の中心までの距離が1cm以内にあるものをCA1群, 2cm以内にあるものをCA2群, 2.1-4cmの噴門部近傍にあるものをNC群, 4.1cm以上離れた体上部にあるものをUB群とし, 各々の病巣についてX線診断学的な観察を行った. 1) C領域および噴門部における早期癌の頻度は11.2%と2.6%で, 他の領域に比較して早期癌の占める割合が低く, 陥凹型にm癌が少なく, 同部における陥凹型早期癌の診断が困難であることを示していた. 食道胃接合部に近づくにつれて分化型癌の占める割合は増加し, 11-30mmの大きさを示すものではsmへ浸潤する病変が増加した. 2) X線による確定診断は隆起型では18病変中15病変 (83.3%) が可能であり, 陥凹型では60病変中39病変 (65.0%) であり, うちCA1群では9病変中3病変 (33.3%), CA2群では6病変中6病変 (100%), NC群では22病変中12病変 (54.5%), UB群では23病変中18病変 (78.3%) であった. CA1群では接合部に接する瘢痕のない癌の診断が不良で, 空気量を多くして噴門部の粘膜ひだを伸展し, 噴門が開いた状態で撮影することにより診断能が向上できた. また, NC群およびUB群では前壁にある早期癌の診断率が低く, 腹臥位二重造影を加えることにより診断率が向上した.

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© 1990 順天堂医学会
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