順天堂医学
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原著
角膜の網目状紋様
江本 一郎
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1990 年 36 巻 2 号 p. 216-223

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抄録
臨床において角膜に認められる網目状模様として次のものが挙げられる. (1) フルオレスセイン角膜染色後, 眼瞼上より角膜をこすった直後に認められるもの (Anterior Corneal Mosaic) (2) 眼瞼上より同様の操作の後, 眼底反射により認められるもの (3) アプラネーション-トノメトリー施行時認められるもの (4) Anterior Crocodile Shagreen (5) Posterior Crocodile Shagreen. これらについて検討を行ったが, 前三者は全く同一のpatternであることがわかった. Anterior Corneal Mosaicは, 3歳から90歳の男女500人以上の全てに認められ, 一症例の一年間の観察ではそのpatternは全く変化しなかった. また, Anterior Corneal MosaicはAnterior Crocodile Shagreenのpatternとも一致した. 同様なpatternは牛角膜にも観察された. 眼瞼上より角膜をこすった直後に固定された牛角膜表面には, モザイク状のridge patternが認められ, 組織学的観察では隆起部は角膜実質の厚さの変化のみを示した. 以上の結果より, Aterior Corneal Mosaicを表出する構造はボーマン氏膜直下の角膜実質に存在することが示唆された. Posterior Crocodile shagreenでは, 細隙灯顕微鏡検査により角膜内皮側を頂点とし実質前1/3層まで走るV字型の, あるいは斜めに走る1本の透明線が認められた. この透明線は, 正常角膜でも50歳以上では角膜周辺部に高頻度に認められた. また正常角膜の組織観察では, この透明線に一致すると考えられる連続したcollagen lamellaeのwaving lineが角膜周辺部から中央に至るまで認められた. この正常角膜に認められたcollagen lamellaeのwavingを来たす構造が, Posterior Crocodile Shagreenの網目状混濁を表出するものと考えられた.
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© 1990 順天堂医学会
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