順天堂医学
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36 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 浅見・大家・和賀井 三教授定年退職記念講演
  • 研究生活の回顧
    淺見 一羊
    1990 年36 巻2 号 p. 168-175
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    筆者の研究課題は, クジラそしてヒトの心臓における刺激伝導系のマクロ解剖と組織学に端を発し, やがて心臓の発生とくに中隔形成の諸経過を再検討することに及んだ. 連続切片復構に頼る在来の間接的な観察方法を廃し, 胚仔心臓を実体顕微鏡下に直接解剖して, 発生の経過を立体マクロ写真に集録する. 特に心球-動脈幹域の捻転現象を追試し, その具体的過程を詳らかにした. その間, 大動脈が右室から出る場合 (TGA) の路線を示唆する所見を得て, 中性子照射によりラット胚心臓に奇形を誘発する実験を行い, 大血管転位の成因に関する作業仮設を立てた. Latex注入による胚仔心臓の内腔鋳型標本を制作, また発生に伴う血流動態の変遷を高速ビデオ撮影で分析し, 問題の路すじが原始的な流出路に当たると結論した.
  • 和賀井 敏夫
    1990 年36 巻2 号 p. 176-188
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    本日ここに退職記念講演の機会を与えられましたことは私にとり非常な光栄であり, 順天堂医学会および関係者に厚くお礼申し上げます. 演題の超音波医学は, 私が昭和25年順天堂医科大学外科に研究生として入局以来, 外科学の勉学と同時に超音波の医学的応用の研究に着手して以来, 本年で超音波医学研究満40年になる訳であります. この間, 超音波医学は国内は勿論世界的にも医学領域に新分野を確立するにいたったのであります. ここで特に申し上げたいことは, この超音波医学の研究特に現在世界的にも臨床医学に大きな貢献をなしている超音波診断法は, 世界的に見ても順天堂で始められ順天堂で育てられてきたと言っても過言ではないという歴史的事実であります. また本学の研究施設である超音波医学研究センターは, 基礎および臨床研究部を備えたもので, その後の世界における超音波医学研究所の文字通りの創始となったものであります. しかもこれらの全く先例のない新しい学問領域の開拓が, 大学当局のご配慮の下で多くの順天堂大学の同窓生の皆様の力により, 講座の枠を越えた団結と協力により成就されたものでありまして, この機会にこれら大学当局と順天堂大学の同窓生の皆様にお礼を申し上げると同時に, 心からなる敬意を表する次第であります. またこの超音波医学研究40年の長きに汎り, 超音波医学研究を通じ, 親身なご指導を賜りました故有山登先生・福田保先生・田中憲二先生・山川邦夫先生・柿原辰雄先生等の恩師の先生方, また若くして亡くなられた研究仲間の先生方に心からなる感謝と共に, この記念講演を捧げるものであります.
原著
  • 小林 千博
    1990 年36 巻2 号 p. 189-196
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    最近, 多くの免疫抑制剤が各種移植後に用いられている. これらの眼科領域への使用については, 副作用の面からも眼局所への投与方法が望まれている. 今回, 著者はFK-506を結膜下注射, シクロスポリン (以下CYA) を点眼として実験的角膜移植後に投与を行った. FK-506結膜下注射の実験では, 白色家兎・有色家兎を一対として12対24羽を使用し, 交換移植後0.1mg/Kg週2回の投与で角膜移植片の透明維持率は100% (コントロールは25%) 移植片反応が高率にみられる再移植に白色家兎11羽を使用し, 移植後に0.1mg/Kg週2回投与で透明維持率は88%, 白色家兎を5対10羽使用した交換移植後0.01mg/Kg 週1回投与で100%の透明維持率を得た. 0.025% CYA 点眼を用いた白色家兎20羽の交換移植では, 1日4回点眼で100% (コントロールは30%) の透明維持率を得ており, 再移植では3眼中2眼が術後40日現在透明性を保っている. 以上の実験より, FK-506・CYA共に局所投与によっても強い免疫抑制効果が認められたので, 両者の臨床への応用が期待できる.
  • 小林 康彦
    1990 年36 巻2 号 p. 198-206
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    N- (7-dimethylamino-4-methylcoumarinyl) -maleimide (以下DACM) というSH基に特異的に結合する蛍光試薬を応用して開発されたDACM染色を用い, 角膜における-SH基・S-S結合の意義を検討した. これまで主に皮膚における角化の過程において-SH基およびS-S結合の重要性が報告されているが, 今回著者は, 正常角膜, また角膜の創傷治癒過程での-SH基・S-S結合の分布・挙動を観察, その意義につき考察を加えたのでここに報告する. 実験材料は白色家兎40羽を用い, 正常角膜20羽および剪刀にて角膜の中央を実質までの深さに創傷を作成したものを20羽使用した. 創傷作成角膜に関しては経時的変化を観察した. 正常角膜では-SH基は, 上皮細胞質・実質細胞・内皮細胞に存在し, S-S結合は, 上皮細胞基底膜・デスメ膜に存在することが示された. 創傷作成角膜では6時間後, スライディング部の細胞に強い-SH基を示す蛍光が示されたが, 実質細胞の-SH基の蛍光は低下していた. 48時間後では修復した上皮細胞において-SH基の存在を示す蛍光が示され, 実質細胞においても同様の強い蛍光がみられた. 一方, S-S結合は創傷治癒過程にある角膜では, 特に明確な反応は示さなかった.
  • 根岸 千秋
    1990 年36 巻2 号 p. 207-215
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    昭和57年1月より昭和61年12月まで施行された線維柱帯切除術 (Trabeculectomy) のうち, 半年以上経過観察することのできた86例103眼について線維柱帯切除術のみ施行した症例群と線維柱帯切除術に毛様体解離術を併用した症例群, および線維柱帯切除術と白内障を同時に手術した症例群について検討した. 術後眼圧コントロール率は線維柱帯切除術のみを施行した群で70.5%, 線維柱帯切除術に毛様体解離術を併用した群で77.8%, 線維柱帯切除術と白内障を同時に手術した群で82.4%であった. 線維柱帯切除術単独施行群において, 40歳未満の症例に眼圧コントロール率が低かった. 線維柱帯切除術単独施行群と線維柱帯切除術に毛様体解離術を併用した群には, 術後合併症の発生率に有意差は認められなかった. 術後視野悪化例において, 34眼中13眼に眼圧コントロール良好例がみられた. 術後眼圧コントロール不良例に対する線維柱帯切除術の再手術の成績は悪かった.
  • 江本 一郎
    1990 年36 巻2 号 p. 216-223
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    臨床において角膜に認められる網目状模様として次のものが挙げられる. (1) フルオレスセイン角膜染色後, 眼瞼上より角膜をこすった直後に認められるもの (Anterior Corneal Mosaic) (2) 眼瞼上より同様の操作の後, 眼底反射により認められるもの (3) アプラネーション-トノメトリー施行時認められるもの (4) Anterior Crocodile Shagreen (5) Posterior Crocodile Shagreen. これらについて検討を行ったが, 前三者は全く同一のpatternであることがわかった. Anterior Corneal Mosaicは, 3歳から90歳の男女500人以上の全てに認められ, 一症例の一年間の観察ではそのpatternは全く変化しなかった. また, Anterior Corneal MosaicはAnterior Crocodile Shagreenのpatternとも一致した. 同様なpatternは牛角膜にも観察された. 眼瞼上より角膜をこすった直後に固定された牛角膜表面には, モザイク状のridge patternが認められ, 組織学的観察では隆起部は角膜実質の厚さの変化のみを示した. 以上の結果より, Aterior Corneal Mosaicを表出する構造はボーマン氏膜直下の角膜実質に存在することが示唆された. Posterior Crocodile shagreenでは, 細隙灯顕微鏡検査により角膜内皮側を頂点とし実質前1/3層まで走るV字型の, あるいは斜めに走る1本の透明線が認められた. この透明線は, 正常角膜でも50歳以上では角膜周辺部に高頻度に認められた. また正常角膜の組織観察では, この透明線に一致すると考えられる連続したcollagen lamellaeのwaving lineが角膜周辺部から中央に至るまで認められた. この正常角膜に認められたcollagen lamellaeのwavingを来たす構造が, Posterior Crocodile Shagreenの網目状混濁を表出するものと考えられた.
  • -高血圧の関与とその肥大形態および心機能の分析-
    内田 睦郎
    1990 年36 巻2 号 p. 224-235
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    非対称性中隔肥大 (ASH) を呈する肥大心で, 高血圧の有無によるその形態上および心機能上の差異について, 断層心エコー・ドプラー法を用いて検討した. ASHを呈する肥大心を高血圧合併群と非合併群, すなわち肥大型心筋症 (HCM) 群に分け, 左心室拡張期長軸像および短軸像で心室中隔の肥大様式を分類した結果, 高血圧群で有意に基部肥大型が多く, また前方中隔型はHCM群の4例にのみ認められた. パルスドプラー法による心機能上の差異について検討した結果, HCM群の収縮能は健常群と同等ないし若干亢進していたが, 形態的に著明なASHを呈していても肥大がびまん性に及ぶか, または高血圧が存在しない場合では明らかな拡張能の低下は認められなかった.
症例報告
  • 竹内 信良, 宮内 輝幸, 新藤 昇, 玉本 文彦, 住 幸治, 片山 仁, 射場 敏明, 八木 義弘
    1990 年36 巻2 号 p. 236-240
    発行日: 1990/07/20
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
    膵体尾部欠損症は, これまで本邦で30数例報告されている. 今回われわれは, 糖尿病を主訴とする57歳の女性にみられた本症の1例を経験した. 本症の診断は, 腹部CT・ERPでは比較的容易であるが, 近年腹部臓器疾患の診断に, 頻繁に用いられている超音波検査では判断を誤る可能性があると思われたので, 若干の考察を加えて報告する.
抄録
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編集後記
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