順天堂医学
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特集 癌性疼痛管理
癌性疼痛に対する漢方療法
町 俊夫
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1992 年 38 巻 1 号 p. 15-20

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抄録

古来, 悪性腫瘍と思われる疾患に対して漢方方剤 (いわゆる漢方薬) が用いられていたが, 現代では漢方方剤や生薬は化学療法や手術療法に併用して生活機能の回復のために用いられている. 漢方方剤の作用機序は十分に解明されてはいないが, 漢方方剤自体が腫瘍免疫を促進し, 抗腫瘍作用を示すことも研究されてきている. 漢方医学では生体の偏向状態を病気と見なし, 治療はその偏向状態を漢方方剤によって修正することであるという学問体系をとっている. 一方, 癌性疼痛は癌病変がかなり進行した段階で併発してくるものであり, この段階では身体・精神ともに漢方でいう偏向状態, 特に消耗状態への偏向がいちじるしい場合が多い. この状態は漢方医学的には『寒虚症』といわれる状態にあり, このような証に用いられる漢方方剤は, たとえば補中益気湯・十全大補湯が適応になる. そしてその上で疼痛に関して〈附子〉を併用する. 附子には鎮痛・強心・利尿・抗炎症・代謝賦活などの作用があり, 上記漢方方剤に併用することで心身の偏向状態を治しつつ疼痛管理が可能になる. 漢方方剤による癌性疼痛管理に関しても, 神経ブロックやモルフィンなどによる西洋医学的な治療法との併用が不可欠であり, 今後はQOLや在宅管理に関して, 漢方方剤や附子を用いた漢方療法は欠くべからざる治療法であると考える.

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© 1992 順天堂医学会
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