順天堂医学
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特集 癌性疼痛管理
癌性疼痛患者の心理学的側面
赤沢 滋
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1992 年 38 巻 1 号 p. 9-14

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抄録

癌性疼痛患者の心理的問題の実態を調査するため, 葛南病院外科病棟に入院した進行癌・終末期癌患者を対象に半構造化した面接と心理テストを施行した. 対象患者の身体的愁訴としては, 疼痛が77%と最も多かった. 精神症状としては抑うつ気分, 不安・焦燥, 不機嫌などの症状が高頻度にみられたが, これらの症状は「死にゆく患者がたどる心理過程」のある段階を示しているものと考えられた. 心理テストとして実施したうつ病自己評価尺度とフェイススケールの得点が, 疼痛の程度と相関がみられたことから, 抑うつ状態と痛みが密接な関係にあることが考えられた. フェイススケールは極めて簡便な検査法であり, 終末期癌患者の痛みの程度や精神状態を把握する指標として有用であると考えられた. 癌性疼痛が心理的要因により増強される可能性があることを述べ, 癌性疼痛患者に対する心理的援助が重要であることを強調した. 最後に癌性疼痛患者に対する心理的援助と向精神薬療法の実際について述べた.

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© 1992 順天堂医学会
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