抄録
膵頭十二指腸領域癌の組織発生について, 胆嚢摘出 (胆摘) の影響を実験的・臨床的に検討した.
実験には雌のSyrian golden hamsterを用い, 発癌物質にN-nitrosobis (2-oxopropyl) amine (BOP) を使用した. 実験方法として次の4群にわけた.
1群;胆摘後BOPを皮下注射した群. 2群;BOP皮下注射のみの群. 3群;胆摘のみの群. 4群;無処置の群.
1群・2群にのみ癌の発生をみた. 1群の癌発生率は77% (10/13頭), 2群は79% (11/14頭) であった. このうち肉眼的に胆管の拡張を認めたものは, 1群で70% (7頭) ・2群で73% (8頭) であった. 胆管の拡張をきたした成因は病理組織学的検索より, 胆管を直接閉塞させた共通管癌と胆管を周囲より圧排閉塞した膵管癌に分けられ, 1群は71% (5頭) が共通管癌・2群では88% (7頭) が膵管癌で統計学的に有意差を認めた.
臨床例では過去10年間に当科で経験した合流異常のない膵頭十二腸領域癌50例を対象とした. このうち胆管の拡張と胆石を認めたものは10例であった. 胆摘後に発生した症例は3例であった. また2例は結石が頸部に嵌頓し萎縮胆嚢の状態で, 胆嚢壁の肥厚を認めた. この計5例の癌発生部位は膵内胆管および膨大部であった.
このことは実験で胆摘群に共通管に癌を認めたことと考え合わせ胆嚢がない状態, もしくは機能していない状態が, 下部胆管癌の発生に関与していると考えられる. このような状態が臨床的に癌の部位診断同定の1つの手掛かりとなるものと考えられた.