抄録
戦後日本の医療に恩恵をもたらした麻酔の進歩は, 同時に麻酔そのものによる障害, すなわち麻酔死を医療の中に導入した. 現在アメリカなどでは10,000症例の麻酔に対して1-2件の麻酔死の発生をみている. しかし日本においては大学病院における数件の報告があるが, 組織だった報告はなされてない. 順天堂大学医学部附属医院・分院および関連病院において集計した161,049症例において, 麻酔に関係した術中心停止は33例 (10,000に対して2.05), 術中死は7例 (10,000に対して0.43) であった. その原因は換気不全・薬物投与によるものが大半であった. 日本では現在麻酔業務に従事している医師は, 必ずしも麻酔専門医とは限らず, 麻酔科医の不足は重大な日本医療の問題である. 現在麻酔にたずさわっているわれわれのみならず, 医療行政を担当している人々の適切な対策が望まれる.