1982年4月-1992年12月の間に, 順天堂医院泌尿器科に入院し, 手術を行った件数は2359例, 1984年 (浦安病院開院) -1992年12月の間に, 浦安病院で手術を行った件数は1062例であった.
その内, 悪性腫瘍の割合は30-50%で, その比率は年々増加の傾向にある. 悪性腫瘍の内最も多いのは膀胱癌 (608例) である. その約80%は表在性癌で, 経尿道的切除術 (内視鏡的手術) が多い. これらの腫瘍易再発性であるが, 最近BCG膀胱内注入療法が80%以上の有効率を示している. 膀胱癌に次いで多いのは, 前立腺癌 (211件) と腎癌 (197件) である. 腎癌の増加については, 発生率が増えたこともあるが, 超音波診断学やCTをはじめとする画像診断の進歩によるところが多い. 我が国における前立腺癌による死亡率は, この10年間に2倍強の増加を示している. 前立腺癌についても, 集団検診の普及, 超音波診断, 腫瘍マーカーなどによる早期診断が予後の改善に寄与している. 泌尿器科外来を訪れる患者のうち, 最も多いのは尿路感染症と尿路結石症である. 特に尿路結石症に対しては, 内視鏡手術の著しい発達にともなって治療法が一変した. 泌尿器疾患の診断と治療は, 近年いちじるしい変革を遂げている. 本講演においては, この10年間における泌尿器科学の進歩を, われわれの教室の業績をまじえて展望する.
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