順天堂医学
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39 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 竹内・北川・茅・丹下・四教授定年退職記念講演会
  • 竹内 昭
    1993 年39 巻2 号 p. 143-146
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    私の40余年の研究生活の内, 約9割を順天堂大学で過ごしたことになる. これまでの研究は, 大部分シナプス伝達に関係したものであり, そのうち順天堂大学で行った研究の主なものについて簡単に述べる.
  • -われわれの教室の業績を中心として-
    北川 龍一
    1993 年39 巻2 号 p. 147-155
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    1982年4月-1992年12月の間に, 順天堂医院泌尿器科に入院し, 手術を行った件数は2359例, 1984年 (浦安病院開院) -1992年12月の間に, 浦安病院で手術を行った件数は1062例であった. その内, 悪性腫瘍の割合は30-50%で, その比率は年々増加の傾向にある. 悪性腫瘍の内最も多いのは膀胱癌 (608例) である. その約80%は表在性癌で, 経尿道的切除術 (内視鏡的手術) が多い. これらの腫瘍易再発性であるが, 最近BCG膀胱内注入療法が80%以上の有効率を示している. 膀胱癌に次いで多いのは, 前立腺癌 (211件) と腎癌 (197件) である. 腎癌の増加については, 発生率が増えたこともあるが, 超音波診断学やCTをはじめとする画像診断の進歩によるところが多い. 我が国における前立腺癌による死亡率は, この10年間に2倍強の増加を示している. 前立腺癌についても, 集団検診の普及, 超音波診断, 腫瘍マーカーなどによる早期診断が予後の改善に寄与している. 泌尿器科外来を訪れる患者のうち, 最も多いのは尿路感染症と尿路結石症である. 特に尿路結石症に対しては, 内視鏡手術の著しい発達にともなって治療法が一変した. 泌尿器疾患の診断と治療は, 近年いちじるしい変革を遂げている. 本講演においては, この10年間における泌尿器科学の進歩を, われわれの教室の業績をまじえて展望する.
  • 茅 稽二
    1993 年39 巻2 号 p. 156-162
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    戦後日本の医療に恩恵をもたらした麻酔の進歩は, 同時に麻酔そのものによる障害, すなわち麻酔死を医療の中に導入した. 現在アメリカなどでは10,000症例の麻酔に対して1-2件の麻酔死の発生をみている. しかし日本においては大学病院における数件の報告があるが, 組織だった報告はなされてない. 順天堂大学医学部附属医院・分院および関連病院において集計した161,049症例において, 麻酔に関係した術中心停止は33例 (10,000に対して2.05), 術中死は7例 (10,000に対して0.43) であった. その原因は換気不全・薬物投与によるものが大半であった. 日本では現在麻酔業務に従事している医師は, 必ずしも麻酔専門医とは限らず, 麻酔科医の不足は重大な日本医療の問題である. 現在麻酔にたずさわっているわれわれのみならず, 医療行政を担当している人々の適切な対策が望まれる.
  • 丹下 一郎
    1993 年39 巻2 号 p. 163-175
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    口唇裂の手術に努力した筆者の今日に至る過去40有余年を, およそ10年ごとの4期に分かち, そのおのおのの時期における主なテーマを採りあげて述べた. 1. はじめの頃 (-1963) : 高木式兎唇手術法をはじめとして, 旧時代の術式の混沌にはじまり, 次第にLeMesurier, Tennison, Millardなどの方法が用いられた. 2. Origami Cleft Lip (-1973) : 口唇裂の手術の改良には, まずその形態の分析・再構成が必要との考えにて, 口唇裂の折紙模型による正常との比較がなされた. 3. 新しい見かた (-1983) : 口唇裂を各等級の「裂度」に分け, 片側性-中間性-両側性, 外鼻型-口唇形-歯槽型, 非欠損群-欠損群など多面的分析・評価がなされた. 4. ラムダ型口唇弁移植法 (-1993現在) : アッベ氏法を改良し, それをラムダ型とすることにより, 人中の造形など多くの点において目覚ましい好結果が得られた.
原著
  • -その所見と損傷の解剖学的局在-
    谷口 克己
    1993 年39 巻2 号 p. 176-184
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    自閉症児の頭部CTを検討しCT像上の変化を観察した. その変化を解剖学的に同定し, 自閉症の症状や程度を比較検討した. 症例はすべて瀬川小児神経学クリニックより紹介された自閉症児や, 〈自閉症様〉と書き表された自閉症を疑われた患児132例で, そのCTを観察して96例になんらかの変化が, 側脳室下角やその近傍の白質に認められた. すなわち, 側脳室下角の前方へ凸の限局性の拡大や深部白質の低吸収域である. 解剖学上成人の扁桃核は正中より30mm以内にあり, 外側には前交連束・鈎状束がある. この30mm線を基準線として病変を二つに分類してみた. グループIはこの基準線より外側に病変があるもの, グループIIは内側にあるものとした. 基準線の両側に病変の見られる例も1型に含めた. CT上所見の見られた96例中, I型は62例・II型は34例であった. 96例を自閉症児と自閉症とまだ確定されていない例に分け, 二つの分類に分けてみると扁桃核に主病変があるとみられるII型は自閉症児が28例・自閉症様患児が6例であり, 1型はそれぞれ33例・29例であった. これはより純粋な自閉症の傾向を示す例は扁桃核に病変があることが多いことを示している. 自閉症児の特徴である利き手の遅れや言語発達遅延とCT上の変化を検討したが, はっきりした関係は見出せなかった.
  • 花澤 喜三郎
    1993 年39 巻2 号 p. 185-190
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    膀胱癌患者において, BCG膀胱内注入療法後に数種のインターロイキン濃度が尿中で上昇することが知られているが, 未治療膀胱癌患者では尿中インターロイキン-1 (IL-1) 濃度の上昇は報告されていない. 今回, われわれは未治療膀胱癌患者において尿中IL-1の濃度測定を試みた. 膀胱癌患者19例・膀胱炎患者2例・血尿を伴った前立腺肥大症患者2例・健常者6例を対象とした. 方法は新鮮尿を5倍および50倍に濃縮し, ELISA法を用いてIL-1αおよびβ濃度を測定した. 膀胱炎患者および血尿を伴った前立腺肥大症患者において, 尿中IL-1αおよびβ濃度の上昇を認めたため膀胱癌症例の選択には制限を加えた. 正常例との比較では, 膀胱癌患者症例の方が尿中IL-1αおよびβ濃度が高値を示す傾向にあった. さらに, 腫瘍が大きくなるに従い尿中IL-1αおよびβ濃度の上昇を認めた. 未治療膀胱癌患者において尿中IL-1濃度の上昇を認めた報告は今回がはじめてであり, 生体内において膀胱癌自体からのIL-1の産生の可能性が示唆された.
  • 村田 方見
    1993 年39 巻2 号 p. 191-199
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    フェオフォルバイドaとNd: YAGレーザーを使った光化学作用の膀胱癌に対する効果を検討することを目的として実験を行った. マウス膀胱癌を対象として実験を行い, in vivoで腫瘍内に壊死巣の形成を確認し, in vitroでは腫瘍細胞浮遊液中のフェオフォルバイドaの濃度, フェオフォルバイドaの取り込み時間, 光照射エネルギーが増えるほど腫瘍生細胞が減少することを観察できた. また, フェオフォルバイドaには明らかな細胞毒性を見出すことはできなかった. このことからフェオフォルバイドaとNd: YAGレーザーの併用はマウス膀胱癌に対して殺細胞効果があり, これは主に光化学作用によるものであると考えられた.
  • 中津 基貴
    1993 年39 巻2 号 p. 200-208
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    早期胃癌に縮小手術を行うにあたって, リンパ節転移が問題になる. 陥凹性早期胃癌において, 癌巣内潰瘍がどのようにリンパ節転移に影響を及ぼしているかを解明する目的で, 陥凹性早期胃癌283例を対象として, 癌巣内潰瘍および潰瘍瘢痕を村上の分類に準じUI (-) ・UI-II・UI一III・UI-IVとし, 粘膜下層浸潤様式を, 微量・散在・びまん・圧壊に分け臨床病理学的に検討した. 粘膜内癌にリンパ節転移はなかった. 癌巣長径が1.0cm未満の小さな癌にもリンパ節転移はなく, 1.0cm以上2.0cm未満の比較的小さな癌のリンパ節転移は癌巣内潰瘍併存例のみにあり, 5.0cm以上ではUI-IIIで45.5%, UI-IVで50.0%と高いリンパ節転移率であった. リンパ管侵襲陰性でも, 癌巣内潰瘍併存例ではリンパ節転移があった. 微量・散在浸潤でも癌巣内潰瘍併存例ではリンパ節転移があり, UI-III・UI-IVでは高いリンパ節転移率であった. UI-IIIのびまん, UI-IVの散在・びまんでは全例にリンパ節転移があった.
  • 辻 昌宏, 四宮 (岡田) 滋子, 佐藤 潔
    1993 年39 巻2 号 p. 209-224
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    われわれは脳髄膜腫術後患者32例を対象とし, てんかん発作発症の危険因子を, 術前・術後の経時的脳波変化を中心に画像診断・臨床経過により評価し, 抗てんかん薬中止時期の指標について検討した. 観察期間は術後6ヵ月から7年である. 9例 (28.1%) では術後2ヵ月の時点で脳波が正常もしくは軽度異常であり, 基礎律動周波数分析ではα帯域におけるパワーのピーク値が上昇した. その時点より抗てんかん薬を漸減・中止したが, その後の脳波は定常状態であり, 臨床発作はみられなかった. 臨床発作は3例 (9.4%) にみられた. 臨床発作の危険因子は, 脳波経過不良, 術後の脳浮腫, 抗てんかん薬の予防的投与を行わないこと, 怠薬または不適切な中止であると考えた.
  • 斎川 雄弘, 藤森 正登, 河野 浩章, 佐野川 玲子, 広瀬 幸子
    1993 年39 巻2 号 p. 225-234
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    全身性エリテマトーデス (SLE) に合併する血小板減少症の機序については, 抗血小板自己抗体によるという考えと, SLEに好発する血栓症によるという考えがある. また最近, SLEの血栓症の原因として抗カルジオリピン (CL) 抗体を含む抗リン脂質自己抗体が注目されるようになっている. われわれは, 抗血小板自己抗体と抗CL抗体が検出され, しかも血小板減少症を自然発症するSLEモデルマウス (NZW×BXSB) F1と (NZB×BXSB) F1マウスを用いて, これらの自己抗体産生の有無と血小板減少との相関を遺伝的に解析した. その結果, IgG血小板結合自己抗体の出現が血小板減少ときわめてよく相関を示したのに対し, IgG抗CL抗体の出現との間には明らかな相関は認められなかった. また血小板減少を示すマウスからモノクローナル抗血小板抗体および抗CL抗体を作製し, これらの抗体を正常マウスに投与して血小板減少能を検索したところ, 抗血小板抗体投与群および抗血小板抗体と抗CL抗体を混合して投与した群で血小板減少が認められたが, 抗CL抗体投与群では認められなかった. 以上よりこのマウスにみられる血小板減少は, 主に抗血小板抗体の出現によると考えられた.
  • 望月 健太郎
    1993 年39 巻2 号 p. 235-240
    発行日: 1993/06/20
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    経静脈的にheparinを注入すると, 内皮細胞表面のheparan sulfateに結合しているplatelet factor4 (PF4) は, heparinと結合し流血中に遊離する. しかし, このheparin released PF4 (HR-PF4) の臨床的意義についてはまだ不明である. 今回, 糖尿病患者のHR-PF4値を測定し, 種々の臨床病態との関連について検討した. 対象は, インスリン非依存性糖尿病の男性患者124名と健常男性9名である. 採血後60U/kgのheparinを静注し15分後に採血し試料とした. 試料はEDTA. Theophyllin処理血液を4℃, 3000r. p. m. にて遠心分離し, 得られた血漿を一20℃にて保存し測定試料とした. 測定試料を用いてPF4を測定しHR-PF4値を算出して次の成績を得た. 1. 糖尿病群と健常群のHR-PF4値に有意差はなかった. 2. HR-PF4値と年齢・罹病期間との間にそれぞれ有意な相関を認めた (各r=0.265, P<0.05, r=0.243, P<0.005). 3. 年齢・罹病期間をmatchさせた細小血管症 (+) 群・ (-) 群のHR-PF4値を比較すると, (+) 群は (-) 群に比べ有意に高値を示した (p<0.05). 以上の結果より, HR-PF4値は網膜症ならびに腎症, すなわち細小血管症の進展度を投影していると考えられた.
報告
症例報告
抄録
てがみ
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編集後記
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