抄録
NZB×NZW (NZB/W) F1マウスにはヒトの全身性エリテマトーデス (SLE) に酷似した病態が自然発症する.
発症には両親系由来の複数の遺伝子が関与している. この点に関してわれわれは, 主要組織適合遺伝子複合体 (MHC) とT細胞抗原受容体 (TcR) 遺伝子複合体とがSLEの発症に重要な遺伝的要因であることを明らかにし, B細胞上のある特定のMHCクラスII分子とT細胞上の特定のTcRレパートリーとの相互作用の重要性を提唱してきた.
この考えをもとに, われわれはマウスのH-2クラスll分子である1-A分子と1-E分子のうち, 1-E分子に対するモノクローナル抗体をSLE発症前の2カ月間 (3-5カ月齢) NZB/W F1マウスに週1回の割合で投与して, その後の病態発症に及ぼす影響を検討した.
その結果, 抗1-E抗体投与はSLEの発症を遅延されるばかりでなく, これを強く抑制し, いちじるしい延命効果をもたらした. 免疫細胞系の変化を調べた結果, 抗1-E抗体の投与は早期には自己抗体産生細胞系であるB1細胞にいちじるしい選択的減少をもたらすことにより, SLE発症に遅延効果を示すと考えられた. このB1細胞の減少はその後, 加齢とともに回復したが, 抗DNA抗体産生は十分回復しなかった.
これは, 抗1-E抗体投与が自己反応性T細胞に寛容状態を誘発することによりB1細胞の抗DNA抗体, 特にIgG抗体産生細胞への分化を抑制しているためと考えられた. 以上の結果から, 抗MHCクラスII抗体投与は将来ヒトSLEの治療にも応用可能な方法と考えられた.