順天堂医学
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原著
更年期における不定愁訴の精神医学的検討
--女性健康外来を経て精神科を受診した症例を中心に--
一宮 洋介増村 年章深間内 一孝桑原 慶紀井上 令一
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1996 年 41 巻 4 号 p. 481-486

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抄録
産婦人科女性健康外来を受診した更年期婦人患者のうち, 精神疾患の疑われる症例について検討した. 対象は平成5年4月から平成6年11月までに同外来を受診した患者312名で, このうち, うつ病の自己評価尺度SRQ-D値が10点以上の高値のもの, ホルモン補充療法後も症状改善のみられないものについて精神科外来でも診療を行った. 精神科受診をすすめられた症例16例中, 実際に精神科を受診したのは12例であった. このうち8例 (67%) がうつ病・4例 (33%) が神経症であった. SRQ-D値は平均で19.6±6.2と高値を示した. しかしSRQ-D値のみではうつ病と神経症の鑑別は困難であった. うつ病の症例では心気・焦燥が前景化しており, 抑うつ・制止といった精神症状より, むしろ身体症状が主体をなしていた. 一方, 312例中, 精神科受診歴のある症例は8例で, 7例がうつ病・1例が心因反応であった. これらのSRQ-D値は平均で10.9±7.7と比較的低値で, 当院に通院歴のあったうつ病の3症例では症状が遷延化し, 心気神経症的色彩を呈していた. 産婦人科女性健康外来を受診する患者の一部には精神科治療も必要なものが含まれ, 臨床上, 両科の共同診療体制, すなわちコンサルテーション-リエゾン-サービスが有用であることが示唆された.
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© 1996 順天堂医学会
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