抄録
低酸素脳症に起因する記憶障害,注意障害を有した外来患者のアコースティックギター練習に応用行動分析学的介入を取り入れ,その効果について検討した.介入前は,ギター演奏の一般的な反復練習を行った.介入では,本人が達成しやすい簡単な課題へと難易度調節を行った.また,左手ギター操作に着目した評価チャートを作成し,週1回の介入毎に本人へ成績をフィードバックした.支援サークルのコンサートへの参加を遅延した強化刺激として利用した.評価チャートによる得点は,1回目の介入時18点から5回目では23点(24点満点)まで改善した.自宅練習回数は,介入前0.78 回/日に対し,介入後は1.52回/日まで増加した.介入後,手指機能の向上が認められた.目標としていたコンサート参加を果たし,本人から前向きな発言があった.また,家族からは自発的に家事を手伝う回数が増えたとの報告があった.今回の介入は,ギター演奏のスキルを向上させるうえで有効に機能したものと考えられた.