抄録
腎不全, 特に慢性透析患者に合併する骨代謝障害は総じて腎性骨異栄養症 (Renal Osteodystrophy: ROD) と呼称される. 腎性骨異栄養症は骨の組織学的所見から, 1) 二次性副甲状腺機能亢進による繊維性骨炎 2) アルミニウムによる骨軟化症 3) 骨軟化症 (くる病) 4) 骨粗鬆症 5) 低回転骨 6) 破壊性脊椎関節症に分けられる.
わが国で最も頻度多く観察される二次性副甲状腺機能亢進症は, 成因・診断・治療について研究が進んでいる. 発症には, 1) Pの排泄不足による高P血症や, 骨の副甲状腺ホルモンに対する抵抗性, および活性型ビタミンD産生低下によって生ずる低Ca血症. 2) 副甲状腺の活性型ビタミンDに対するリセプターの減少. 3) Caによる副甲状腺ホルモン分泌抑制のセットポイントの変化, が考えられており, これらの因子による副甲状腺ホルモンの過剰な分泌が骨回転の早い繊維性骨炎を形成する. 骨変化は腎不全初期から生ずるため, 慢性腎不全保存期からの観察・治療が必要である. アルミニウムによる骨障害はアルミニウム骨症と呼ばれている. アルミニウムの侵入経路は透析液とP結合薬である水酸化アルミニウムであることが判明し, それぞれ対策が講じられている.
過剰な副甲状腺ホルモン分泌の抑制によって, 透析患者に低回転骨が多く合併することが最近, 報告され話題となっている.
本稿では腎性骨異栄養症について原因と治療法について概説する. これらの臨床像を詳細に観察し, 適切な予防/治療法の検討が望まれる.