抄録
ラット心臓に由来するクローン化細胞株H9c2の外向きK+電流の性質を, 未分化の筋芽細胞と分化した筋管細胞期においてホールセル・クランプ型のパッチクランプ法により特徴づけた. 500msの脱分極ステップパルスでK+電流を誘発した. 単核の筋芽細胞では速い上昇と遅い減衰を示し, 保持電位の脱分極によって不活性化される電位依存性外向きK+電流 (IKV) が活性化された. このIKVはテトラエチルアンモニウムによって抑制された (50%抑制濃度1.9mM). 筋管細胞では遅く上昇し, 再分極で遅い尾電流に伴われる別のK+電流が生じた. この遅いK+電流は, 無Ca2+タイロード液の潅流や細胞内への10mMEGTAの適用によって完全に消失することから, Ca2+活性化K+電流 (IKCa) と結論された. IKCaの阻害剤charybdotoxin (CTX) とapaminは, 最大上濃度の100nMで全体のIKaを各々単独で57.0と43.0%抑制し, 同時適用で完全な抑制をもたらした. IKVの性質とIKCaの発現は, クローン化されたH9c2細胞株が外向きK
チャネルの性質に関して心筋よりも骨格筋に近いことを示した. IKCaチャネルの遺伝子発現は細胞の分化に伴い調節されていた.