順天堂医学
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原著
成体および生後発達期のラット糸球体濾過障壁の微細構造的研究
渡辺 晴子
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1996 年 42 巻 2 号 p. 200-206

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抄録
糸球体濾過障壁の微細構造を, 成体および生後発達期のラットにおいて, 低温脱水法を用いて観察した. 成体では, 内皮細胞の細胞質は扁平で, 多数の孔をもち, その孔に隔膜はなかった. 糸球体基底膜は, 1層の緻密板とその両側の透明板から構成されていた. 足細胞の足突起は, たがいに細隙膜で結ばれ, 緻密板との問は, 多数の結合線維によって結ばれていた. 足突起の細胞膜の細隙膜および結合線維につながる部分の直下には, 電子密度の高い裏うち構造が見られた. 生後発達期では, 浅層の糸球体を観察した. 生後5日では, 糸球体の濾過障壁の構造は未熟で, 内皮細胞には孔がなく, 糸球体基底膜は足細胞側と内皮細胞側に2枚の緻密板を含み, また足細胞は足突起を十分に形成していなかった. 15日ではほぼ完全に成熟型の濾過障壁に置きかわっていた. また糸球体の成長過程において糸球体基底膜の拡大装置と考えられる張り出し構造outpocketsは, 10日 15日 20日の糸球体で数が多かったが, 40日と60日のラットでは, いちじるしく数が減少した. また張り出し構造に柱状のものとループ状のものが観察できたが, ループ状のものの方が数が多かった.
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© 1996 順天堂医学会
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