順天堂医学
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特集 癌再発とターミナルケア
精神医学からみたターミナルケアー
松原 博生
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1996 年 42 巻 3 号 p. 318-326

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抄録

終末医療については, ホスピスや在宅看護等をも含めて, <Quality of life>に重きがおかれるようになってきた. しかし患者自身の身体的および精神的苦痛や, それを身近に受けとめざるをえない患者の家族の精神的苦悩ははかり知れないものである. また治療を担当する医療スタッフにおける精神一身体的負担もおろそかにはできないものである. 精神科では〈コンサルテーション-リエゾン精神医学〉という立場で終末医療の患者やその家族と接する機会がある. 当院では他科より精神科へ多くの終末患者の診察依頼があるが, その目的は患者の意識障害・不穏・抑うつ・睡眠障害・幻覚等の精神症状の改善である場合が多い. 臨床の場面では, 患者個人の病状の違いのみでなく, 患者と主治医との治療関係のあり方, 患者のおかれている家庭環境や家族構成, 病名告知の問題などの要素によって精神科医は異なった対応をしなくてはならない. まず精神科医の役割は, 患者・家族・医療スタッフ3者の関係に介在することにより, 主軸となる科の医療の成果があげられるよう援助することである. さらに, 医療チーム相互に必要な情報が円滑に伝達される橋渡しをするのがもう一つの役割となる. 3番目は, 患者の看病に疲弊してきた家族に支持的に対応することや, 必要があれば患者あるいは抑うつ的な症状を呈した家族にも精神科的援助を行うことにより, 望ましい状況下で家族が患者を介護することを援助することである. これからの総合病院における精神科医の役割は, 細分化した総合病院の医療の現場において, 各科の連携が有様的なものになるように支援し, 患者と家族にかかる心理的負担を軽減し, 患者個人および家族により良い治療環境を提供することであると考えられる.

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© 1996 順天堂医学会
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