順天堂医学
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原著
頭頂中心線上陰性棘波 (Pz spike) に関する臨床的・脳波的検討
渡辺 響子高橋 系一
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1996 年 42 巻 3 号 p. 357-367

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抄録

小児の脳波検査で, 睡眠時に頭頂中心線上に限局して, 最大振幅を示す陰性棘波・鋭波 (Pzspikeと略) を認めるものがある. Pz spikeを有する115例 (男67 女48) につき年齢分布・臨床疾患分類・脳波経過, 同胞の脳波などを検討した. Pz spikeの初発年齢の分布は4歳の25例を頂点とし, 3-7歳で89例 (77%) に出現するという年齢依存性がみられた. 臨床疾患では, 115例中に熱性痙攣が43例 (37%) と最多で, てんかんが34例 (30%) を占めた. 自律神経症状群が16例, 頭部外傷が15例と非痙攣疾患での出現も多く, また, 熱性痙攣とてんかんでの発作回数は, 5回以下と少ない症例が共に65%を占め, 痙攣発作を誘発する可能性の低い棘波と思われた. 脳波の経過を2年以上追えた79例中64例 (81%) でPz spikeは消失し, 年齢は15歳以前に97%が消失しており, その予後は良好で, 思春期には消失した. Pz spikeを示した小児14家族の同胞18例の検討では, Pz spikeは6家族の同胞に見られた. この6家族ではPz spikeの出現年齢は同胞の間でほぼ等しく, Pz spikeの発生には遺伝因子の関与が考えられた.

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© 1996 順天堂医学会
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