抄録
目的: 小児のC型慢性肝炎に対するインターフェロン (IFN) 治療効果の予測因子および長期予後を臨床病理学的に検討する.
対象と方法: 天然型のIFN-α (24週間;計800万単位/kg) を投与し, その効果が判定可能なC型慢性肝炎患児26例を対象とした.
IFN治療効果は, 投与終了後6ヵ月以内に血清トランスアミナーゼ (ALT) 値が正常化し以後も6ヵ月にわたり正常, かつ持続的に血清HCV-RNA陰性例を著効 (CR群12例), それ以外を非著効 (NCR群14例) と判定した.
肝針生検はIFN療法を開始前6ヵ月以内 (全例) および, 終了後2年 (9/26例) で行った. 生検所見をヨーロッパ分類および, Modified Histology Activity Index (Modified HAI) スコアで評価し, 胆管障害: リンパろ胞形成・好酸体壊死・脂肪変性, および鉄沈着も検索した.
結果: 肝生検所見 (IFN治療前) をIFN治療効果別に比較すると, (1) ヨーロッパ分類上の各組織型は両群間で有意差がなかった. (2) Modified HAIスコアは, 壊死炎症反応, 線維化およびTotalのいずれも両群間で有意差がなかった. (3) 胆管障害・好酸体壊死および脂肪変性はNCR群に, またリンパろ胞形成はCR群に高率にみられたが, いずれも両群問で有意差がなかった. 一方, 鉄沈着はNCR群 (57%) がCR群 (8%) と比較して有意に高率にみられた (P=0.009). これら5項目の組織所見のうち3項目以上を保有する症例およびリンパろ胞形成を除いた4項目中2項目以上を保有する症例は, CR群vs. NCR群でそれぞれ0%vs. 36%・8%vs. 71%とNCR群に有意に高率にみられた (p=0.021・0.001).
IFN治療前後で肝生検所見を比較し得た9例 (CR7例・NCR2例) のうち8例 (CR7例・NCR1例) で組織進行度が改善していたが正常化例はなかった.
結論: 小児のC型慢性肝炎に対するIFN治療効果は, 病理組織学的に鉄沈着と組織所見の保有項目数により予測可能であり, 著効例での組織学的改善には治療終了後2年以上の期間が必要である.