順天堂医学
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43 巻, 2 号
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目次
Contents
特集 岡田・井上・藪田・榊原・山内五教授定年退職記念講演会
  • 岡田 了三
    1997 年 43 巻 2 号 p. 171-178
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    病理組織学は静止画像の観察が主となるため, 動的情報が役立つ循環器疾患とは相性がよくない. しかし反面, 細い病変を繰返し観察できる利点があるため, はじめは気が付かなかった所見の意味が, 後になってはっきりわかることも時々経験する. 筆者が, 内科に入局した1957年より今日まで続けて来た循環器病学の病理形態学的研究の中で,“今一歩”という手掛りを掴みながら力及ばず, 結論が今後に持ち越されたいくつかの話題を, 虚血性心疾患, 特発性心筋症, 結合織異常, 刺激伝導系疾患にわけて, ここに紹介する. 古典的病理形態学領域より提示された疑問が, 新しい分子生物学的研究などによって, 来るべき21世紀に解明されて, 医学の進歩に寄与する機会があれば望外の仕合せである.
  • 井上 令一
    1997 年 43 巻 2 号 p. 179-192
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    ドイツの精神科医であったHans Berger (1929) が頭皮上脳波を記録し, 脳波を臨床に導入してから既に半世紀を超えた. しかし脳波の判定基準は, 未だ十分確立されているとはいえず, 私たちの研究室での過去十年間にわたって調査し続けた2000例余にわたる青年期脳波の検討結果は, 脳波が成人脳波として安定した波形を示すのは成書にあるより遅い23-24歳という新知見を得ている. 脳波がてんかんや意識障害, またさまざまな器質的脳疾患ひいては内分泌疾患などの診断にも重要な役割を果たしていることは周知の事実である. 私たちの教室では, 伝統的に上述の疾患以外に異常脳波によって示されるあるいは付与される精神症状に就いての検討が続けられてきている. 強迫神経症・心気症・離人症・ヒステリーなどの神経症性障害などの検討からはてんかん境界性疾患の可能性が示唆されたが, これらの検討を続けていく過程で共通してみられる病態として, 攻撃性・情動不安定性・衝動性などが確認された. 異常脳波によって示されるこれらの特徴は, てんかんとは異なり病因論的なものというよりは症状形成論的なものとして評価し得るものと思われた. このような臨床特徴は境界性人格障害に見られるが, 一般的には内に向かう攻撃性としては自殺と外に向かう攻撃性としては犯罪と相関する. このことは自殺念慮をもつものには自殺予防としての薬物学的対応の必要性を示し, 犯罪者には社会精神医学的関与のみでは不十分な生物学的障害の基盤を示唆することとなり, 犯罪生物学的視点の必要性をあらためて認識する必要がある. 一方, 病的脳波と見做されやすい, ある種の異常脳波は病的脳波と言えないばかりか高度の注意・集中を要する職種の人たちに出現する傾向のあることを明らかにしつつある. 以上, 主として教室の精神生理班の業績について述べる.
  • 藪田 敬次郎
    1997 年 43 巻 2 号 p. 193-207
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    昭和34年, 東大小児科に入局し, 小児科医となって以来38年が経過したが, その間一貫して小児の電解質異常の研究と臨床にたずさわってきた. 様々な症例とめぐりあい, またいろいろな研究を行ってきたが, そのなかからとくに印象に残っている5つのトピックスを選び紹介した. (1) 高張性脱水症とその輸液療法, (2) コレラの輸液療法, (3) Bartter症候群, 本邦第一例の報告, (4) 先天性クロール下痢症, 本邦第一例の報告, (5) 溶血性尿毒症症候群 (HUS症候群) である. (1) と (2) は電解質異常の治療としての輸液療法に関するトピックスである. (1) では小児脱水症の標準的な輸液方式として全国に広く普及している東大小児科方式について述べた. (2) ではフィリッピン・マニラでのコレラの輸液の経験について述べた. (3) (4) はそれぞれ本邦第一例として報告した症例を中心に, その症候群, 疾患の病態生理と診断について述べた. 2疾患とも最近その責任遺伝子が発見されたので診断が容易となった. (5) は昨年大流行したO-157などによる溶血性尿毒症症候群について, 自験例を中心にその電解質異常の診断と治療の要点を述べた.
  • 榊原 宣
    1997 年 43 巻 2 号 p. 208-222
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    過去10年間に経験した胃癌初発症例1367例を対象に胃癌手術で問題となるリンパ節郭清範囲と胃切除範囲について検討した. これら症例のうち, 粘膜内癌でリンパ節転移を認めたものはなく, 予後もよく, 死亡例はなかった. 粘膜下層癌で長径0.9cm以下のものでリンパ節転移はなかった. しかし, 併存潰瘍がulII・IIIになるとリンパ節転移が認められ, しかも第2・3群リンパ節にみられた・リンパ節リンパ球の免疫能をみたところ, 転移リンパ節に近い転移のないリンパ節に免疫能の高いことがわかった. これらの結果から, 早期癌で転移のあるリンパ節のみ郭清すべきであることがわかった. 一方, 進行癌では腹部大動脈周囲リンパ節の郭清に外科治療の〈かなめ〉があり, そのなかでも腹腔動脈根部上縁から左腎静脈下縁の高さにあるリンパ節に郭清の意義のあることが明らかとなった. 胃切除範囲について, 多発胃癌の頻度の高いことから縮小しえないことがわかり, 小弯側を高く切除すべきことを明らかにした. これらのことがわかるまでの検索成績を基にした考え方のあゆみについてのべた.
  • 山内 裕雄
    1997 年 43 巻 2 号 p. 223-234
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    The author described his personal experiences for more than 30 years in treating absent fingers and/or hands due to congenital condition or trauma. His initial interest in this subject was aroused by the thalidomide incident occurred in Japan around 1960, when he encountered many children with the tragic thalidomide embryopathy. In the first part of the paper, he described his experience in the research and development of electric arms. He obtained an opportunity visiting the Pediatric Amputee Clinic at Michigan Crippled Children Commission (MCCC) in Grand Rapids headed by late Dr. G. T. Aitken and Dr. C. Frantz in 1968. This prompted him to organize a study group to develop electric arms for the thalidomide victims in Japan responding a big social demand to create a reasonable artificial arm for them. He and his group developed arms with three-degree of freedom (motion) incorporated with a microcomputer system. But its heavy weight, weak power and complicated mechanism prevented the children from daily and practical use of the arm. Frankly, the author and his group ended up only to realize the extreme difficulty in simulating a living human arm and hand. In the second part of the paper, the author described surgical managements for absent fingers and/or hands, demonstrating the photographs of his own cases. The reconstructive methods included digital transfer, toe transplantation, bone lengthening, digital reconstruction, interdigitation and Krukenberg procedure. Digital transfer was especially useful for the total thumb defect. Microvascular toe transfer using the second toe was successful in a child with monodactylic form of symbrachydactylia. Sometimes, thumb reconstruction with a wrap-around flap from a big toe yielded a good cosmetic and functional result. He also described reconstruction of floating thumbs with iliac bone grafting and/or vascularized metatarsophalangeal joint transplantation associated with an abdominal flap. As for the bone lengthening procedure, he mentioned that recent knowledge in callotasis improved the results and expanded its indications. Finally for long forearm amputees, especially bilateral ones, he mentioned that the value of Krukenberg procedure still exists in view of its good postoperative functional capacity.
  • --人間到るところ青山あり--
    亀山 恒夫
    1997 年 43 巻 2 号 p. 235-243
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
原著
  • 川北 剛
    1997 年 43 巻 2 号 p. 244-254
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 慢性関節リウマチ (RA) におけるenthesisの病態および変化を検討する目的でRA膝の前十字靭帯 (ACL) 脛骨付着部の病理組織学的検索を行った. 対象・方法: 36-71歳 (平均57.4歳 男4・女21) の25RA膝から人工膝関節全置換術の際にACLを脛骨付着部をつけて採取し, 薄切切片標本を作製した. HE・Pentachrome染色後, 病理組織学的に検索し, 術中所見・X線所見と比較検討した. 対照として同様に採取した変形性膝関節症 (OA) 20膝を用いた. 評価方法: 病理組織所見の評価としてはRAでみられた5項目の所見を点数化し合計点数が高いほど高度の変性を示すように試みた. また術中ACLの肉眼所見を3群に分類し, X線分類としてLarsenの分類および顆間隆起の形状を4群に分類したものを用いた. 結果: 靭帯骨付着部は組織学的に靭帯層・非石灰化線維軟骨層・石灰化線維軟骨層, および骨層に分けられたが, RAではOAに比べその4層構造が乱れる傾向にあり, tidemarkの消失, リンパ球浸潤, 骨への線維性肉芽組織の侵入, 未分化な間葉系細胞の増生, フィブリンの析出, 骨層板の菲薄化などがみられた. 肉眼所見との比較では, ACLの実質の変化が強いものはその骨付着部の破壊も強かった. X線所見と病理組織像には明らかな関連性はみられなかった. 結論: RA膝のenthesisの変化は炎症を伴った骨吸収の坑進に基づく病態であった.
  • 佐藤 眞純
    1997 年 43 巻 2 号 p. 255-265
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    椎間板ヘルニア摘出後に欠損部位は通常そのまま放置されるが, 術後のさらなる変性は不可避であり, これに対する修復的な処置が望まれる. 本動物実験は, 椎間板部分摘出後に自家椎間板組織・生理的組織接着剤・自家滑膜組織・ビアルロン酸ナトリウムを欠損部に充填し, 移植部の組織学的変化を検索することを目的とした. 雑種成犬18頭を用い, 前方より経腹膜的に3レベルの腰椎椎間板に到達し, 前方線維輪と髄核を可及的に摘出した. 第1群は摘出操作のみ, 第2群は他レベルから摘出した自家髄核を生理的組織接着剤でcoatingして移植, 第3群は生理的組織接着剤を注入, 第4群は膝関節より採取した自家滑膜組織挿入, 第5群ではヒアルロン酸ナトリウムのみ注入とした. 第1群を除き, すべて摘出前方線維輪は他レベルから採取した線維輪で置換した. 術後12週後に剖検し, 正中矢状面病理標本を作製, 52椎問を検鏡した. いずれの群においても, 前縦靭帯の肥厚, 線維輪および髄核の線維化や硝子化, および周囲組織からの線維性組織の侵入を認めた. 第2群では25椎間板中11椎間板において, 既存の髄核と境界明瞭な硝子化した移植髄核を認めた. 第1群と比べ, 第2, 3, 4群とも既存髄核の変性は少なかった. 軟骨細胞は腫大し増生していた. 第5群では, 軟骨板損傷を生じるほどの軟骨細胞の過形成を惹き起こしていた. 各群で若干の成績の違いはあるものの, 線維輪および髄核摘出による組織傷害は大きく, その修復過程には周辺組織からの結合織増殖が主であり, 髄核や滑膜の自家組織, 生理的組織接着剤注入によってある程度変性進行抑制効果が認められたものの, 椎間板修復を期待するのは無理であった. 生理的組織接着剤およびはヒアルロン酸ナトリウムの注入では軟骨細胞増生の可能性が認められた.
  • 森田 眞敏
    1997 年 43 巻 2 号 p. 266-279
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    脊髄障害が脊髄伝導路および脊髄血流におよぼす影響を検討するために, 脊髄切断. 圧迫時の下行性脊髄誘発電位と損傷脊髄の血流量を測定した. 雑種幼犬26頭・日本猿4頭を用いて, 切断. 圧迫時の経頭蓋電気刺激および経頭蓋磁気刺激による下行性脊髄誘発電位と, さらにイヌにおいては, 障害前の血流量と障害部位より頭側および尾側における脊髄血流量の変化を測定した. イヌでは脊髄切断時に, 経頭蓋電気刺激による第2成分と経頭蓋磁気刺激による第1成分の振幅は, 後側方切断によって大きく減少し, 経頭蓋電気刺激による第1成分の振幅は, 切断を腹側に進めていくにしたがい, より大きく減少した. サルでは経頭蓋電気刺激による第2成分と経頭蓋磁気刺激による第1成分の振幅は後側方で大きい傾向がみられ, 経頭蓋電気刺激による第1成分の振幅は腹側よりで大きかった. イヌ・サルとも, 経頭蓋電気刺激による第2成分と経頭蓋磁気刺激による第1成分の潜時がほぼ同様のパターンを示した. 切断・圧迫など, 何らかの障害が脊髄に加わると脊髄血流量は一時的に増大するものが多く, そのパターンは多様であった. イヌの血管形態は個体差が大きいため, 損傷脊髄の血流量においては, 増減のパターンが多様であると考えた. 切断部より頭側で血流が増大するものが多く, これは単に, 根動脈により髄節的に血流が保たれているのではなく, 前および後脊髄動脈による頭側よりの代償も関与しているのではないかと考えた. 多少の増減はあるが, 切断部より頭側・尾側, いずれの部位でも血流は保たれていた. 圧迫部より尾側でも血流は保たれていた.
  • 尾上 昌弘
    1997 年 43 巻 2 号 p. 280-292
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    目的: 小児のC型慢性肝炎に対するインターフェロン (IFN) 治療効果の予測因子および長期予後を臨床病理学的に検討する. 対象と方法: 天然型のIFN-α (24週間;計800万単位/kg) を投与し, その効果が判定可能なC型慢性肝炎患児26例を対象とした. IFN治療効果は, 投与終了後6ヵ月以内に血清トランスアミナーゼ (ALT) 値が正常化し以後も6ヵ月にわたり正常, かつ持続的に血清HCV-RNA陰性例を著効 (CR群12例), それ以外を非著効 (NCR群14例) と判定した. 肝針生検はIFN療法を開始前6ヵ月以内 (全例) および, 終了後2年 (9/26例) で行った. 生検所見をヨーロッパ分類および, Modified Histology Activity Index (Modified HAI) スコアで評価し, 胆管障害: リンパろ胞形成・好酸体壊死・脂肪変性, および鉄沈着も検索した. 結果: 肝生検所見 (IFN治療前) をIFN治療効果別に比較すると, (1) ヨーロッパ分類上の各組織型は両群間で有意差がなかった. (2) Modified HAIスコアは, 壊死炎症反応, 線維化およびTotalのいずれも両群間で有意差がなかった. (3) 胆管障害・好酸体壊死および脂肪変性はNCR群に, またリンパろ胞形成はCR群に高率にみられたが, いずれも両群問で有意差がなかった. 一方, 鉄沈着はNCR群 (57%) がCR群 (8%) と比較して有意に高率にみられた (P=0.009). これら5項目の組織所見のうち3項目以上を保有する症例およびリンパろ胞形成を除いた4項目中2項目以上を保有する症例は, CR群vs. NCR群でそれぞれ0%vs. 36%・8%vs. 71%とNCR群に有意に高率にみられた (p=0.021・0.001). IFN治療前後で肝生検所見を比較し得た9例 (CR7例・NCR2例) のうち8例 (CR7例・NCR1例) で組織進行度が改善していたが正常化例はなかった. 結論: 小児のC型慢性肝炎に対するIFN治療効果は, 病理組織学的に鉄沈着と組織所見の保有項目数により予測可能であり, 著効例での組織学的改善には治療終了後2年以上の期間が必要である.
  • 梁 広石, 姜 奕, 浜野 慶朋, 鶴井 博理, 橋本 博史, 広瀬 幸子
    1997 年 43 巻 2 号 p. 293-303
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    T細胞やB細胞の過剰免疫反応の抑制や免疫寛容の維持にFas-Fasligand (FasL) を介した活性化細胞のアポトーシス死機構が重要な役割を担っているが, 自己免疫疾患における自己抗体産生B細胞の発生にFas-FasL系の異常が関与しているか否かは明らかでない. この点を明らかにする目的で, われわれはSLEモデル系であるNZB×NZW (NZB/W) F1マウスを用いて, B細胞におけるFas発現と自己抗体産生との関係を解析した. 未刺激の正常Balb/cマウスおよび2ヵ月齢NZB/W F1マウスの脾臓および腹腔B細胞には, B1およびB2細胞ともにFas発現細胞はほとんど見られなかった. 一方, これらの細胞を抗CD40モノクローナル抗体 (mAb) ・LPS・抗IgM抗体で刺激すると, 抗CD40mAbによってのみ強いFas発現の増強が見られた. この際, B2細胞は全てがFas高発現を示したのに対して, B1細胞は低発現と高発現の2群に分けられた. これらの細胞に抗Fas mAbを添加すると, Fas高発現B1およびB2細胞はアポトーシス死を起こしたが, Fas低発現B1細胞はアポトーシス抵抗性であった. 既に疾患を発症した加齢NZB/W F1マウスの脾臓には, 低レベルのFasを自然発現したB細胞の出現が見られ, これらの細胞はアポトーシス抵抗性であった. これらの結果から, B細胞におけるアポトーシス死はFasの発現レベルに依存した現象であることが明らかとなった. また, 抗CD40mAb刺激後のFas低発現B1細胞の形質は, 加える抗体濃度や反応期間を増しても変化しなかったので, B1細胞には今まで知られていなかつたFas発現レベルで区別される2つの亜集団が存在することが示唆された. 抗DNA抗体産生との関係を調べたところ, 抗DNA抗体はそのほとんどがFas低発現B細胞から産生された. 得られた結果から, B1細胞におけるFas発現レベルを規定している機構の解明を通し, 自己免疫疾患におけるB細胞免疫寛容の破綻の機序が明らかになるものと考えられた.
  • 高橋 豊
    1997 年 43 巻 2 号 p. 304-311
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    IgA腎症では糸球体病変が同程度でも, 予後に大きな差が生じることが知られている. そこで, 糸球体硬化の前駆病変として注目されている糸球体上皮細胞の障害と長期予後との関連性について検討した. 5年以上観察しえたIgA腎症36症例を対象として, その病理所見から軽症-中等度障害群と高度障害群とに分類し, それぞれの群の透析療法非導入例と導入例とを比較した. 1症例あたり平均5個の糸球体について, 糸球体係蹄壁外側細胞 (上皮細胞) 数と糸球体係蹄壁内側細胞 (メサンギウム細胞・内皮細胞・浸潤細胞) 数を算出した. 次いで, 糸球体断面積を計測し, 得られた結果から, 糸球体断面積104μm2あたりの糸球体係蹄壁外側 (上皮) 細胞密度 (podocyte density;PD) : 糸球体係蹄壁内側細胞密度 (intraglomerular cell density;IGCD) を算出した. PDは軽症-中等度障害群と高度障害群の両群において, 透析群が非透析群に比べ有意に低下していた. また, IGCDは高度障害群において透析群が非透析群に比べ有意に増加していた. 以上の結果より, 既知のIgA腎症の予後判定基準に加えこの糸球体係蹄壁外側細胞密度を測定することは, IgA腎症の長期予後を予測するうえで大変有用と思われた.
症例報告
総説
  • --消化器癌に対する5-FU持続静注と少量シスプラチン反復投与併用療法の有用性--
    射場 敏明, 八木 義弘, 木所 昭夫
    1997 年 43 巻 2 号 p. 321-326
    発行日: 1997/09/16
    公開日: 2014/11/18
    ジャーナル フリー
    現在シスプラチン (CDDP) /5-FU併用療法は消化器癌に対するfirst lineの治療法であるが, 最近, CDDPは10mg/day程度の少量連日投与が行われることが多い. これによる奏効率は胃癌で50%程度とかなり高く, 一方で腎障害をはじめとする副作用はごく軽度である. CDDP/5-FU併用療法におけるCDDPの作用機序は, 従来メチオニン代謝障害に伴う腫瘍内還元型葉酸の増加とされてきたが, 少量CDDP投与においてはこのような効果は確認できず, CDDPそのものの制癌効果や, 他のメカニズムによるモジュレーションを考慮する必要があると考えられた. 少量シスプラチン反復投与と5-FUの併用療法はその優れた効果とマイルドな副作用により, 今後は外来治療を中心として普及していくものと考える.
抄録
てがみ
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編集後記
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