椎間板ヘルニア摘出後に欠損部位は通常そのまま放置されるが, 術後のさらなる変性は不可避であり, これに対する修復的な処置が望まれる. 本動物実験は, 椎間板部分摘出後に自家椎間板組織・生理的組織接着剤・自家滑膜組織・ビアルロン酸ナトリウムを欠損部に充填し, 移植部の組織学的変化を検索することを目的とした.
雑種成犬18頭を用い, 前方より経腹膜的に3レベルの腰椎椎間板に到達し, 前方線維輪と髄核を可及的に摘出した. 第1群は摘出操作のみ, 第2群は他レベルから摘出した自家髄核を生理的組織接着剤でcoatingして移植, 第3群は生理的組織接着剤を注入, 第4群は膝関節より採取した自家滑膜組織挿入, 第5群ではヒアルロン酸ナトリウムのみ注入とした. 第1群を除き, すべて摘出前方線維輪は他レベルから採取した線維輪で置換した. 術後12週後に剖検し, 正中矢状面病理標本を作製, 52椎問を検鏡した.
いずれの群においても, 前縦靭帯の肥厚, 線維輪および髄核の線維化や硝子化, および周囲組織からの線維性組織の侵入を認めた. 第2群では25椎間板中11椎間板において, 既存の髄核と境界明瞭な硝子化した移植髄核を認めた. 第1群と比べ, 第2, 3, 4群とも既存髄核の変性は少なかった. 軟骨細胞は腫大し増生していた. 第5群では, 軟骨板損傷を生じるほどの軟骨細胞の過形成を惹き起こしていた.
各群で若干の成績の違いはあるものの, 線維輪および髄核摘出による組織傷害は大きく, その修復過程には周辺組織からの結合織増殖が主であり, 髄核や滑膜の自家組織, 生理的組織接着剤注入によってある程度変性進行抑制効果が認められたものの, 椎間板修復を期待するのは無理であった. 生理的組織接着剤およびはヒアルロン酸ナトリウムの注入では軟骨細胞増生の可能性が認められた.
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