抄録
近年, 糖尿病性腎症から, 慢性腎不全へ進行する患者数は増加の一途をたどり, 新規透析導入患者の原因疾患第2位を占めるに至り, 社会的にも大きな問題となっている. 腎死に至った糖尿病性腎症例の生命予後は極めて不良であることから, 糖尿病性腎症の診断をできるだけ早期につけ, 腎症の進展予防, 更には, 発症予防を図ることが重要である. 本症の主な病態は, 蛋白尿の持続・腎機能の低下・高血圧の出現である. 本症の治療の基本は, (1) 厳格な血糖コントロール, (2) 良好な血圧コントロール, (3) 食事療法であり, より早期から腎機能の低下を予防することにある.